社説:神戸で女性刺殺 再犯防げなかったか検証を

面識のない男に付け狙われ、マンションのエレベーターという密室で女性が殺害された事件に、戦慄(せんりつ)を覚えた人は少なくないだろう。 神戸市の女性会社員が自宅に向かうエレベーター内で刺殺され、2日後に東京都在住の男が殺人容疑で逮捕された。 男は職場を退勤した女性のあとを約4キロ、50分ほど尾行し、マンション玄関のオートロックの扉を女性の後に続いて入る「共連れ」で侵入した姿が防犯カメラに写っていたとされる。 捜査関係者によると、男は刺したことを認めた上で、「全く知らない人」、「(事件2日前に女性を見かけ)好みのタイプの女性だと思い、後をつけた」と供述しているという。詳しい動機など真相解明が急がれる。 看過できないのは、男が同様の手口を重ねていたとされることだ。 事件の3日前には別の女性の後をつけ、共連れでオートロックをすり抜けたとみられる。女性は逃げて無事だった。 3年前には市内のマンションに侵入し、女性の首を絞めたとして傷害罪などに問われ、神戸地裁が執行猶予付きの有罪判決を言い渡していた。 刑事確定記録によると、路上で見かけ、一方的に好意を抱いた女性に約5カ月もストーカー行為を続けマンションに侵入。帰宅する女性がドアを開けた際に室内に押し入ったという。 裁判官は再犯への危惧を示していた。保護観察官や保護司による指導で更生を目指す「保護観察」をつける必要性があったのではないかとの指摘もある。 全国の警察はストーカー規制法の禁止命令を受けた加害者全員に連絡して近況を確認し、治療やカウンセリングを促すよう取り組むが、任意のため受診率は約6%と低迷している。 義務化や対象者の範囲も含め、再犯防止策を強める議論が求められよう。 警察庁によると、昨年のストーカー事案の被害者と加害者の関係は「交際相手」など顔見知りが多く、「面識なし」は1割以下だった。被害者側は、狙われていると気づきにくい。抑止は容易ではないが、事件の多角的な検証で方策を探りたい。 オートロック扉が完全な防犯とはならないことも改めて浮き彫りとなった。 解錠時には周囲に不審者がいないかを確認し、誰かいればその人に解錠させて後から入るといった注意が必要だろう。専門家は、電話がかかってきたふりをしてその場をやり過ごし、エレベーターには顔見知り以外、一緒に乗らないよう助言する。 今回、逮捕につながったのは、複数の防犯カメラ映像をつなぐ「リレー方式」の捜査だった。神戸市では100台増設する方針というが、限界もある。社会全体で防犯意識を高めることが欠かせない。

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