愛知県一宮市で妊婦が車にひかれ死亡する事故があり、遺族が2日、自動車運転処罰法違反(過失運転致死)罪で起訴された被告について、名古屋地検一宮支部を訪れ、事故後に重い障害を負って生まれた娘も被害者と認め過失運転致傷罪でも起訴するよう申し入れた。 胎児は刑法上、「母体の一部」とされ、検察側が罪に問えるかをどう判断するかが注目される。 事故は5月21日に起きた。約1カ月半後に出産を控えた研谷沙也香さん=当時(31)=が路側帯を歩いていたところ、後ろから軽乗用車にひかれ、2日後に搬送先の病院で亡くなった。長女の日七未ちゃんは緊急帝王切開で生まれたものの、おなかの中で低酸素状態に陥り重度の障害が残った。 運転していた同市内の無職女(50)は現行犯逮捕され、6月に起訴されたが、罪名は沙也香さんに対する過失運転致死罪のみだった。 名古屋地裁一宮支部で2日、女の初公判が開かれ、沙也香さんの夫、友太さん(33)と父、水川淳史さん(62)は被害者参加制度で傍聴。閉廷後、検察側に集めた署名約11万筆と共に要請文を提出した。 取材に応じた友太さんは「娘には毎日病院に通って面会することしかできない。被害者として扱ってもらうため署名を大きな力に変えたい。妻のため、娘のために何か残せることはと思ったとき、『署名ならできる。やらないと後悔する』と始めた」と強調。検察側には「被害者側がここまで動かないと対応してくれないのかという思いもある」と述べた。 胎児への加害行為を罪に問えるかは、水俣病事件の最高裁決定が1988年、「胎児が出生し人となった後、母体の一部として発生した病変で死亡した場合は業務上過失致死罪が成立する」と判断した例がある。検察側はこの判例も考慮し検討するもようだ。