6歳の長男を4日間にわたり自宅に放置したとして先月13日、保護責任者遺棄の疑いで26歳の母親が逮捕された。集合住宅の階段で泣いていた長男に気づいた人が児童相談所に通報したことから事態が発覚したという。 「主に親からのネグレクト等によって孤独や空腹に耐えかね、周辺地域の家に上がり込んだり、食べ物や遊びを要求したりするといった『迷惑行為』をする児童が、ネットを中心に『放置子』と呼ばれていることをご存知でしょうか」 こう話すのは、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏。 「放置子という呼び名は、ネット上から発生したと思われるいわゆる『俗語』であり、児童虐待にまつわる専門用語などとはいえません。一方で、この言葉は何年も前から認知度が急激に高まっており、実際に放置子問題をこじらせている地域社会も少なくないのです」 こども家庭庁によれば、令和5年に児童相談所で相談対応した児童虐待のうち、ネグレクトは3万6465 件で、虐待相談総数の16.2%を占めたという。 今回取材に応じてくれたのは、ある地方都市在住の専業主婦・Sさん。昨年の秋、突然居住地域に現れ、周辺を混乱に陥れた少年について語ってもらった。 Sさんが住んでいるのは、自治体の中心地から車で20分ほどの所にある新興住宅地。近隣には、Sさんが暮らすエリアよりも古くからある住宅地も広がっている。地域全体が、かつて住宅街として切り拓かれた一帯なのだという。 一区画ずつが広く整備された住宅街では、1年を通じて自宅の庭でBBQを楽しむ家庭が多いそうだが、そんな日常にふいに現れた見知らぬ少年が、実は放置子だったというのである。 平塚氏は、Sさんの身に起きたトラブルの経緯をこう説明する。 「Sさんの自宅近くには町内の公園があり、休日に庭でBBQを開催する時、子どもたちはその公園と自宅を行ったり来たりしているそうです。ある日、Sさんは3家族でBBQを開催。子どもは総勢7人でした。 しかし、子どもたちが何度目かで公園から戻ってきた際、同じ小学校の友達と偶然会ったらしく、4人を新たに自宅に連れてきたといいます。その後、友達も輪に入れて皆で食事していたところ、『あれ?キミって誰』と注目を集めたのが、輪の中の誰1人として素性を知らない児童だったとのことです」 この児童は頭髪が金髪で見た目が特徴的なこともあり、子どもたちは「うちの学校は金髪ダメよ。この子、見たことない」と口々に言った。少年は初対面の人々を前に、自己紹介をすることもなく、次々に肉やソーセージなどを頬張った。よくよく聞けば、その児童とは、公園で遊んでいる時に仲間に入ってきて、しばらく一緒に遊んだだけの初対面の子どもであった。 Sさんはこう述べた。 「数少なかった米沢牛も遠慮なく食べられて衝撃だったのですが、それだけでは終わりませんでした。その金髪の子は、その後、頻繁に私たちの町内に出没。BBQメンバーの家を中心に、突然訪れては家に上がり込み、なかなか帰らないなどのトラブルを起こして町内で問題になったんです。 ウチも2度ほど来られて、お菓子を食べ尽くされたり、ゲームを手放さないなどされ、とても不安になりました。周囲とも相談して最終的に児童相談所に通報しましたが、どこの誰だかわからないので、係の方に何も説明できないことに気が付きましたね」 結局、その「放置子」の住所や姓名はわからずじまいだったという。こうしたトラブルで悩んだ際は、その子の姓名や住所を確認した上で問い合わせてみた方が良さそうである。 【関連記事】「名前は?と聞くと…」経験豊富と思しき放置子。あとをつけてわかった驚きの事実とは。では、なかなか正体を明かさない「放置子」のあとを、Sさんらが尾行した際の驚きの結果についてレポートしている。 【取材協力】平塚俊樹:危機管理コンサルタント【聞き手・文・編集】川路詠子 PHOTO:Getty Images【出典】こども家庭庁:令和5年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数