トランプ氏、2度目のイギリス国賓訪問を開始 英米関係は「とても良い」

ショーン・コフラン王室担当編集委員 アメリカのドナルド・トランプ大統領は16日、2度目となる国賓訪問のためイギリスに到着した。王室の儀礼、通商協議、国際政治が入り交じる多忙な日程が予定されている。 トランプ氏はアメリカから大統領専用機「エアフォース・ワン」で出発する前、訪英は「名誉なことだ」と述べ、「イギリスとの関係は非常に良好だ」と語るなど、前向きな姿勢を示していた。 大統領の訪問開始に合わせ、アメリカによる数十億ドル規模の技術投資契約が発表された。トランプ氏は、「彼ら(イギリス側)は通商協定を少し調整できるかどうかを見たがっている。(中略)私は彼らを助けたいと思っている」と述べた。 しかし、訪問の主な目的については、「友人」であるチャールズ国王に会うことだとし、「彼は国を非常によく代表している、非常に上品な紳士だ」と語った。 ロンドン近郊のスタンステッド空港に到着したトランプ氏は、滑走路上でイヴェット・クーパー英外相らによる公式歓迎を受けた。 トランプ氏は、16日夜をアメリカ大使公邸「ウィンフィールド・ハウス」で過ごす。17日には、ウィンザー城で王室の儀式と豪華な演出が予定されている。トランプ氏はウィンザーについて「最高の」舞台だと述べている。 トランプ氏を迎えるのはチャールズ国王と王室の主要メンバーで、現時点ではカミラ王妃も含まれている。王妃は16日に行われたケント公爵夫人の葬儀を、急性副鼻腔炎のため欠席した。 ウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃も儀式的な歓迎に参加する予定。歓迎式典では、礼砲、軍隊による閲兵、大統領夫妻によるウィンザー敷地内での馬車行進が行われる見通しだ。 こうした演出は、王室に対する熱意を再び示したトランプ氏を喜ばせることを目的としている。トランプ氏はウィンフィールド・ハウスに到着した際、国王について「長年の友人であり、誰もが彼を尊敬し、愛している」と語った。 イギリスに対する自身の思いについて、トランプ氏は「ここには心を温めてくれるものがたくさんある。強調しておきたい。とても特別な場所だ」と述べた。 ■イギリスのソフトパワー外交 イギリス政府からの主要なメッセージは、アメリカに対して北大西洋条約機構(NATO)への関与を維持し、ウクライナ支援を継続するよう促す内容になる。今回の国賓訪問では、通常よりも大規模な軍の動員が予定されている。 陸軍、海軍、王立空軍(RAF)から合わせて1300人の軍人が歓迎式典に参加し、イギリスでの国賓訪問としては過去最大規模の儀仗隊が編成される見通しだ。 F-35戦闘機と王立空軍アクロバットチーム「レッドアローズ」による米英合同の編隊飛行がウィンザー上空を飛行し、キア・スターマー首相がトランプ氏と並んでこれを見守る予定だ。これは両国の軍事的な関係の緊密さを示す演出となる。 国賓訪問の中心となるのは、ウィンザー城の聖ジョージ・ホールで開かれる壮麗な晩さん会で、チャールズ国王とトランプ大統領がそれぞれ演説を行う予定だ。招待客には、イギリスとアメリカの料理を取り入れた、両国の「特別な関係」を象徴する料理が提供される見通しだ。 王室の儀礼や写真撮影と並行して、通商および国際協力に関して、トランプ氏に影響を与えるための働きかけも行われる見通しだ。 国賓訪問はソフトパワー外交の一形態であり、王室の魅力攻勢を通じて重要な国際的パートナーとの関係を構築する手段とされている。中でもアメリカは最も重要な相手国とされている。 訪問の開始に合わせて、アメリカのテクノロジー企業がイギリスに310億ポンド(約6兆2000億円)を投資する大型技術契約が発表された。このうち220億ポンドはマイクロソフト(MS)によるものだ。 この契約には、人工知能(AI)、量子コンピューティング、原子力分野での協力が含まれている。スターマー首相は、「高度な技能を要する雇用を創出し、人々の懐により多くの資金をもたらす」始まりになると期待を示している。 トランプ氏の訪英に先立ち、グーグルの親会社アルファベットも、イギリスのAI研究に対して50億ポンドの投資を発表している。 また、アメリカとイギリスの間では、原子力発電の開発を加速させるための協定が締結される予定だ。 一方で、現在イギリスの鉄鋼輸出に課されている25%の関税を撤廃するという目標は、棚上げされたもようだ。ただしこの関税率は、他の多くの国が直面している50%の関税よりは低い水準にとどまっている。 ■反トランプ派の抗議活動で逮捕者も こうしたなか、反トランプ派の抗議者らがウィンザーに集まり始めている。ウィンザー城の壁面には、トランプ氏と未成年女性への性的虐待で有罪とされた資産家ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)の巨大な画像が投影された。 テムズ・ヴァレー警察はその後、「ウィンザー城での無許可の投影」に関連して4人を逮捕したと発表した。声明では、「ウィンザー城周辺での無許可の活動を極めて重大に受け止めている」と述べている。 トランプ氏の訪問期間中は厳重な警備体制が敷かれる予定。訪問は18日午後に終了する。 しかし、最近の他の国賓訪問とは異なり、一般に公開される場面は一切なく、すべての行事はウィンザーの敷地内か、英首相の公式別荘「チェッカーズ」で行われる。 ウィンザーの目抜き通りにはアメリカ国旗が掲げられているが、訪問中の大統領の目に触れることはない。 (英語記事 Trump hails 'very good' relationship as he arrives in UK for state visit)

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