クーデター謀議容疑などで有罪が確定したボルソナロ前ブラジル大統領に対する赦免と議員らの「セルフ防弾」立法推進に怒ったブラジル国民が21日に大規模反対デモに出た。 ブラジル日刊フォリャ・ジ・サンパウロなどによると、この日首都ブラジリアをはじめ人口最大密集地域であるサンパウロ、リオデジャネイロなど全国26州で進歩性向の労働党などが主導する法案処理反対デモが開かれた。4万人以上が集まったサンパウロのデモ隊は道路で「赦免反対」と書かれた大型のブラジル国旗を広げて「ボルソナロを監獄へ」「民主主義守護」などのスローガンを叫んだ。 今回のデモはブラジル下院が主導したボルソナロ前大統領と側近の赦免推進の動きから始まった。下院は17日、ボルソナロ前大統領と数百人の支持者を赦免対象に含む法案をファストトラック(迅速処理案件)に指定し通過させた。常任委員会の討論を経ず赦免法案を本会議の採決に送れるようになったのだ。ボルソナロ前大統領は2022年10月の大統領選挙でルラ大統領に敗れた後、軍部クーデターを謀議した容疑などで起訴され懲役27年3月の刑が確定された。 世論の反対にも中道・保守指向の自由党と共和党が赦免案通過に力を入れている。ブラジルのグローボニュースによると、ボルソナロ前大統領が所属する自由党はボルソナロ前大統領を復権させ2026年の大統領選挙出馬への道を開くことを目標にしている。ルラ大統領率いる労働党が与党だが下院は最大野党の自由党を中心に中道・保守指向政党が優位に立つ少数与党の構図だ。 自由党は赦免案通過に向け防弾法案を媒介に共和党をはじめとする中道性向の政党と手を組んだ。中道性向の政党は現職議員に対する刑事訴追と逮捕の権限を議会に付与する内容を骨子とした憲法改正を推進してきた。ブラジル連邦最高裁は80人を超える現役議員に対する捜査を行っている。 グローボニュースは「ボルソナロを赦免したい自由党と議員を狙った捜査を防ぎたい中道性向議員が力を合わせて法案処理が急流に乗った」と伝えた。不逮捕特権を強化する憲法改正案も17日に下院を通過した。ボルソナロ前大統領赦免推進に議員のセルフ防弾立法が加わりこらえきれなくなったブラジル国民と進歩性向政党が大規模デモに出た。 法案通過後の世論の反発が激しくなるとブラジル上院議員も相次ぎ不逮捕特権強化法案に反対の立場を出した。ブラジル民主運動党は「憲法改正案に反対する」と宣言した。ルラ大統領はこの日SNSに「きょうのデモは国民が赦免を望まないことを示す。赦免法案が両院を通過すれば拒否権を行使する」と明らかにした。