【2024年秋ドラマ】『3000万』“連続ドラマの醍醐味”を体感する傑作

10月からスタートした秋ドラマも佳境を迎えてきたが、今期では“連続ドラマならではの醍醐味(だいごみ)”を存分に味わえる作品に出会えた。『3000万』(NHK総合)である。 連ドラを見ていて、続きが気になって仕方がないところで終わり、次週の予告が流れる。「来週まで待てん!」となって1週間が経ち、やっと続きが見られる。そしてまた続きが…。全話一気に公開される配信ドラマなどと比べて、1週間待つのは不便だが、この時間も含めて楽しめるのが、連ドラの醍醐味である。毎週ドラマが放送される曜日に彩りを与えてくれる。 今や配信などでいつでもどこでも見られるが、待ち切れないドラマは、放送が始まる時間にテレビの前に座り、“ながら見”ではなくじっくりと見たい。それが『3000万』だった。 23日に最終回を迎えた本作は、企画の成り立ちが特殊である。発端は本作の演出を務める保坂慶太氏が2022年に立ち上げた脚本開発プロジェクト「WDRプロジェクト」だ。ドラマの企画開発に参加したいプロの脚本家や作家志望者を公募し、2025名の応募者の中から10名を選出。さらにその中から4名の脚本家が集まり、2023年7月から共同で脚本を開発したという。 ヒットした海外ドラマを徹底的に研究し、時間をかけて作られたという脚本は、ストーリーにしてもキャラクターにしても緻密に構成されていた。 とはいっても、大筋のストーリーはシンプルだ。4人の脚本家の中で原案を作った弥重早希子氏は本作の物語について以下のように説明している。 「平凡な家族の前に、ひょんなことから怪しい大金が舞い込んでくる。それを自分たちのものにしようとしたことから、泥沼の災難へと巻き込まれていく」(NHK広報局note「土曜ドラマ「3000万」 明けない夜はない チームを信じ書き続けた日々」より) シンプルながらも物語にぐいぐいと引き込まれてしまうのは、構成のうまさとともに、キャラクター造形がしっかりしているから。どの人物も、“この人はいい人”“この人は悪い人”と一面的に描かれていない。どのキャラクターも人間味あふれる魅力に溢れていた。

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