ルーブル「王家の宝飾品」は無保険──容疑者逮捕も、未発見なら補償なし

フランス当局は、10月19日にルーブル美術館からフランス王室の宝飾品9点を盗み出した容疑者2人を10月25日の晩に逮捕したと発表した。パリ検察当局のローレ・ベクオーによれば、容疑者はいずれも30代でパリのセーヌ=サン=ドニ県出身。うち1人はパリ=シャルル・ド・ゴール空港でアルジェリア行きの便に搭乗しようとしたところを拘束されたという。 捜査当局が10月24日に発表したところによると、新たに入手した監視カメラの映像には、黄色いベストを着た人物と全身黒ずくめの人物の2人が、家具運搬用のクレーンを使って美術館から1億200万ドル(約156億円)相当の宝飾品を盗み出す様子が映っていた。犯人は「ガレリー・アポロン」の窓から地上に降りた後、スクーターで逃走。今回の窃盗事件は白昼堂々、美術館の開館時間中にわずか7分以内で実行された。 盗み出された美術品は全部で9点あったが、窃盗犯は逃走時に王冠を1つ落としている。残りの8点は回収できておらず、民間保険もかけられていない。フランス文化省によれば、捜査当局が盗品を回収できなかった場合、盗難品に関連する損失に対する補償を国は受けられないという。 今回の窃盗事件によって、ルーブル美術館とマクロン政権には厳しい批判が寄せられている。同館館長のローランス・デカールによれば、事件発生時に警報は正常に作動したというが、ギャラリー内の監視カメラの映像が残っていなかったことや、目撃者がいなかったことに対してセキュリティシステムへの非難が高まっている。事件発生後、デカールはフランス上院の公聴会に出席し、今回の窃盗事件で美術館のセキュリティシステムの「深刻な欠陥」が浮き彫りになったと述べ、美術館スタッフが「窃盗犯の到着を察知できなかった」と語った。その後、彼女は文化大臣のラシダ・ダティに辞表を提出したが、受理されなかった。 ルーブル美術館の従業員はこれまで、人手不足の解消を求めてきたほか、上層部が警備システムの見直しを先送りしていると非難してきた。事件発生後にラジオ・フランスが入手した監査報告書でも、警備体制が「時代遅れ」であることが指摘されており、同館のセキュリティ体制の抜本的な見直しが求められている。

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