【NBA】シモーネ・フォンテッキオ、攻守の才能を評価するヒート移籍を機に再ブレイク「きっと面白いことになるよ」

ジミー・バトラーの時代を終えたヒートは再建が必要かと思われたが、開幕から上々の戦いぶりを見せている。現地11月3日には敵地でのクリッパーズ戦で最後までもつれる接戦を制した。1点リードで迎えた残り19秒でのポゼッションで攻めきれず最後はカワイ・レナードに、決まればゲームウィナーのシュートを打たれたが、これがリングに弾かれて試合終了。これで4勝3敗と勝ち越した。 今年は『ジミー・バトラー問題』こそないが、テリー・ロジアーが開幕早々に違法ギャンブルの容疑で逮捕され、攻撃の軸となるべきタイラー・ヒーローも開幕から欠場が続いている。それにもかかわらずチームは『ヒート・カルチャー』と呼ぶべきスタイルを体現しつつあおり、それがこのままベースとなるのであれば、積み上げは想定より早いペースで進むだろう。もともとヒートはスロースタートで、プレーオフに向けて仕上げてくるチーム。ベースさえしっかりしていれば、この時期の試行錯誤は悪いことではない。 良い要素はいくつかある。デイビオン・ミッチェルがリーダーシップを発揮し、アンドリュー・ウィギンズは昨シーズンとは違って環境に馴染んだ。新加入のノーマン・パウエルもケガはあったが期待に応える働きを見せている。もっとも、彼らはある程度の働きが見込まれていた選手。サプライズという点では、シモーネ・フォンテッキオのブレイクが効いている。 今オフのフォンテッキオは、ピストンズと2年1600万ドル(約24億円)の契約を結んだ上でダンカン・ロビンソンとのトレードによってヒートに加入した。イタリア代表のエースではあるが、NBAでは2022年のデビューから1年半、ジャズ時代には攻守万能のフォワードとして活躍したものの、ピストンズにトレードされるとチーム戦術と噛み合わず、特に昨シーズンはほとんど存在感を発揮できなかった。トレードが決まった時点でヒートの狙いはロビンソンの3年4800万ドル(約72億円)あったサラリーの削減で、フォンテッキオは解雇されるのではないかとの噂もあった。 だが実際には、ヒートの指揮官エリック・スポールストラはフォンテッキオを高く評価していた。トレードが決まるとユーロバスケットに向けた代表合宿中のフォンテッキオを訪ね、ヒートでどのように起用するつもりかを説明し、彼を安心させたという。 シーズン始動の時点でフォンテッキオはヒートでの挑戦について「選手の才能を見いだし、それがドラフト外でも正しく評価して力を引き出すヒートの手法を称賛の目で見てきたし、自分もヒートに行けばフィットするんじゃないかと感じていた」と期待を語っている。 開幕からフォンテッキオは、これまでロビンソンが担っていたベンチから出るシューターとしてプレーしている。そして、ロビンソンとは違って身体能力が高いため、フィジカルと機敏さを生かして守備でもチームに貢献している。「ジャズ時代は相手のベストプレーヤーをマークするのが僕の役割で、それにプライドを持っていた」という彼は、ピストンズ時代には味わうことのなかった刺激を得ながらコートを走り回っている。 そしてオフェンスでも、コーナー待機だけに限定されていたピストンズとは全く違う新しい挑戦をしている。フォンテッキオはオフボールで激しく動きながらチャンスを作り、精度の高いシュートを打てる。スポールストラが惚れ込んだのはまさにこの点で、フォンテッキオにシュートを打たせるためのセットを何パターンか用意し、時にはオンボールで攻める機会も与えている。 NBAキャリアの存続も危ぶまれた選手の潜在能力にスポールストラが目を付けたのは、アメリカ代表のアシスタントコーチとしてイタリア代表の分析を担当していたからだ。スティーブ・カーのアシスタントを務めた期間、フォンテッキオが代表でプレーした試合はすべてチェックしたという彼は、ピストンズでくすぶっていたのとは違うプレースタイルを見ていた。 「チームに火をつける選手だ」とスポールストラはフォンテッキオについて語る。「そのためには彼を生かす戦術を用意すべきだろう。彼のためのプレーを準備すれば、彼はチームのために働いてくれる。1本決めれば、そこからは雪玉が丘を転がり落ちるようなものさ」 そしてフォンテッキオは、ヒートは「まずまず」のチームでは収まらず、間もなく火がつくと信じている。「今は健康な選手だけでベストを尽くそうとしているけど、全体としてかなり上手くやれている実感がある。これで全員が健康を取り戻し、チームで噛み合ったら、きっと面白いことになるよ!」

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