今年1月に死去した元兵庫県議の名誉を傷つけたなどとして、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)が9日、逮捕された。容疑となった名誉毀損罪は、どんな罪なのか。 刑法の規定によると、名誉毀損とは、不特定または多くの人に向けて「事実」を示し、名誉を傷つける行為を指す。SNSやインターネット上の投稿などで、社会的評価を低下させる行為も含まれる。 この「事実」が、本当かうそかは問わない。ただ、死者への名誉毀損は「内容がうその場合しか罰しない」とされている。 名誉毀損罪で起訴するには、被害に遭った側が警察や検察に刑事告訴することが必要となる(親告罪)。被害者が死亡した場合は、配偶者らが告訴できる。 有罪なら、3年以下の拘禁刑(懲役刑・禁錮刑を2025年に一本化)または50万円以下の罰金が課せられる。 兵庫県警は今回、立花容疑者の認否を明らかにしていないが、立花容疑者は、自身が告訴されたことを受けた8月の会見で「名誉毀損したことは争わないが、十分、違法性が阻却されるだけの根拠を持って発言している」と述べた。 立花容疑者が述べた「違法性が阻却される」とは、名誉毀損の要件は満たすが、特別な理由がある場合に限って違法ではないと判断されることを言う。 どんなケースであれば、罪に問われないのか。刑法では名誉毀損罪について、憲法が保障する表現の自由をふまえ、以下の三つすべてを満たす場合は罰しない、と定めている。 (1)公共の利益に役に立つ「事実」 (2)公益を図る目的がある (3)「事実」が真実であるとの証明がある(真実と信じるに相当な理由がある場合も含む) まとめると、罪が成立するか否かは、発言が真実だったのかや、公共の利害に関することだったのか、などがポイントになる。 9日に逮捕された立花容疑者は、48時間以内に神戸地検に送致(送検)され、その後勾留されるかどうかが判断される見込みだ。 最大20日間の勾留期間を経て地検が起訴すれば身体の拘束が続くが、保釈金を条件とした保釈の申請もできるようになる。 今月末~来月初旬に釈放される可能性もある。 立花氏は今月投稿した自身の動画で、学歴詐称問題で失職が決まった静岡県伊東市の市長選について「立候補する方向で動いています」と意欲を見せ、伊東市内で10日に記者会見をするとしていた。(米田優人、中野浩至)