旅行産業への圧力は中国の常套手段、対カナダでも 「抗議」から「対抗措置」へと軸足移す

【北京=三塚聖平】高市早苗首相が台湾有事は「存立危機事態」になり得ると国会答弁したことを巡り、中国政府は抗議にとどまらず対抗措置に踏み出し始めた。第1弾として中国人に訪日の自粛を促す措置をとり、中国企業もそれに追随している。中国側の反発は激しく、現時点で落としどころは見えない。 ■渡航への注意喚起が号砲に 14日夜に中国外務省が日本への渡航を控えるよう国民に注意喚起する通知を出したのを号砲に、中国政府は人的往来に関する圧力を相次ぎ表明した。16日には教育省が日本留学を慎重に検討するよう注意喚起し、文化観光省も日本への旅行を避けるよう促した。高市首相の発言と関連付け「日本で中国人の安全に関するリスクが高まった」などと主張している。 中国のインターネットメディアは16日、中国の一部旅行会社が冬休みシーズンの訪日団体旅行の募集中止を決めたと伝えた。中国国有航空大手3社は15日、外務省の通知を受けて日本発着の航空券について条件付きでキャンセルや変更を無料で受け付けると発表した。 旅行客を減らして経済的な圧力を与えるのは中国側の常套手段の一つだ。中国の華為技術(ファーウェイ)幹部を逮捕したことを機に関係が悪化したカナダに、中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大後に始めた団体旅行の制限を今月上旬まで続けた。中国側は「カナダで反アジア的な人種差別がはびこっている」と主張していた。 ■トランプ氏の態度影響か 日中間の政治的な緊張は高まっている。中国外務省の毛寧報道官は17日の記者会見で、李強首相が今月下旬に南アフリカで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて高市首相と会談する予定はないと述べた。一部では対立解消の糸口を探る場になると期待されていた。 中国の強硬姿勢は、トランプ米大統領が日中間の問題に距離を置いたことも影響していそうだ。トランプ氏は今月10日、中国の薛剣駐大阪総領事のSNS投稿を巡り中国は「友人」かと問われ、正面からの回答を避けて中国を批判しなかった。中国メディアは「危険な言論を出した後、高市氏は最も重要な同盟国の支持を得られなかった」(中国紙・新京報電子版)と強調している。

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