斎藤知事、立花氏の2馬力選挙は「見ている余裕なく」 再選から1年

兵庫県の斎藤元彦知事が、昨年の知事選で再選されてから1年を迎えた。 政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首=名誉毀損(きそん)容疑で逮捕=が斎藤氏を応援した1年前の「2馬力選挙」について、14日に朝日新聞などのインタビューで改めて尋ねたが、「(知事選では)政党の推薦も組織の支援も全くなく、必死だった。他の候補のことを見ている余裕はなかった」などと述べ、これまでと同様、2馬力選挙に関する自身の考えを示すことはなかった。 立花党首は昨年の知事選で、自らの当選を目指さず斎藤氏を応援する「2馬力選挙」を展開し、国会などで問題視された。斎藤氏はこれまでの会見や議会答弁で、2馬力選挙について明確な考えを示しておらず、この日のインタビューでも同じ態度を貫いた。 昨年の知事選は、斎藤氏が自身らの疑惑を指摘した告発者を捜し出し、懲戒処分したことなどをめぐり、県議会から不信任決議を受けて失職したことで実施された。 立花党首は「自分の当選は考えていない。選挙運動をしながら合法的に斎藤氏をサポートする」と述べて立候補を表明。選挙期間中は斎藤氏の街頭演説の前後に同じ場所でマイクを握り、「斎藤さんは県議にはめられた」「パワハラはなかった」などと訴えた。 選挙の結果、斎藤氏は約111万票を獲得し、2位候補と13万票あまりの差で再選を決めた。 ■1年前は立花氏に「すごく共感」 投開票日の夜、斎藤氏は動画番組「ニコニコニュース」の開票特番に中継で出演した。スタジオには立花党首もいた。 斎藤氏は司会者から立花党首について聞かれ、動画メディア「ReHacQ(リハック)」での討論会を引き合いに「公益通報の問題や内部通報の問題で、問題点の本質をとらえておられるなと。私が思っていたことと同じことを立花さんがおっしゃっていたので、すごく共感させていただいた」と述べた。立花党首は討論会で、斎藤氏らの告発者への対応について「公益通報者保護法に明確に違反しているとは言えない」などと主張していた。 この1年前の発言について、再選1年のインタビューで改めて趣旨を尋ねると、斎藤氏は「討論会で文書問題に関する対応がテーマになった時に、私は適正にやってきたと説明したことを踏まえて、そういったやりとりがあった」と述べた。 「2馬力選挙」は多方面から問題視されてきた。 村上誠一郎総務相(当時)は昨年12月3日の国会答弁で、一般論と断ったうえで、「態様によっては公職選挙法上の数量制限などに違反する恐れがある」と指摘した。 今年2月、立花党首が千葉県知事選で現職の熊谷俊人氏を応援する「2馬力選挙」をすると表明すると、熊谷氏は会見で「やめていただきたい」「少なくとも私自身は、候補者が自らの当選を目的とせず、他の候補者の応援をするのは望ましいことではないと思う」と述べて拒絶。立花党首は立候補したが、2馬力選挙はしなかった。 7月の参院選では「兵庫県でくすぶり続けている問題をさらに訴えていきたい」として兵庫選挙区から立候補。街頭演説で「2馬力選挙は合法ですからね」と語り、斎藤氏について「僕は弁慶で彼は義経。僕は強い力で彼を守っていく」と話していた。 ■これまでも「他候補の行動、認識していない」 斎藤氏はこれまで、2馬力選挙に対する考えを会見などで問われても、「(知事選では)自分がやることに集中していた。他の候補がどういう行動をしているかは認識していない」といった答えに終始してきた。 県議会9月定例会の代表質問では、一連の内部告発文書問題を調べる調査特別委員会(百条委員会)の委員長を務めた自民党の奥谷謙一県議が「選挙でこういうことをしては民主主義がゆがめられるという強いメッセージを、行政の長として発していただきたい」と投げかけた。 だが、斎藤氏は「国や選挙管理委員会で議論し、必要があれば立法措置などを図っていくことが大事だ」などと述べるにとどめた。 この直後の本会議の休憩中、山口晋平議長は斎藤氏に歩み寄り、「何で質問に答えないのですか」と苦言を呈した。 県議の一人は「立花氏が勝手に2馬力をしたにしろ、知事が『やめて』と言っていない以上、客観的には立花氏に選挙に協力してもらったように映る」と指摘。「選挙の正当性が揺らぐ事態を防ぐため、今後の選挙のためにも、兵庫のリーダーとしてメッセージを発してもらいたい」と話した。 立花党首は、今年1月に自死した竹内英明・元県議(当時50)に関するデマをSNSで拡散して名誉を傷つけたなどとして、名誉毀損容疑で今月9日に兵庫県警に逮捕された。弁護士によると、発言内容について真実と信じるに足りる理由があったという「真実相当性」を主張し、罪には当たらないと述べているという。(添田樹紀)

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