医療機器選定を巡って東大病院の医師が逮捕された贈収賄事件では、現金の授受に「奨学寄付金」制度が使われていた。 同制度は過去にも別の汚職事件などで使われており、企業の中には利用をやめる動きも出ている。 奨学寄付金は、国立大学法人などが教育や研究の充実を目的に、企業や個人から受け取る。大学の財政状況が物価高騰などから厳しさを増す中、貴重な財源となっている。ある国立大学では、2024年度の現金による寄付のうち約90%を占めるという。 一方で、13年には臨床研究データの操作問題を巡り、製薬企業が大学に同寄付金名目で現金を提供していたことが表面化。21年には、薬剤使用量を増やす見返りに、製薬会社から同寄付金名目で寄付させたなどとして、大学病院元教授らが逮捕・起訴された。 医療機器などの業界団体によると、業界内では奨学寄付金を控える動きもあるといい、実際にやめたという都内のある医療機器メーカーは「不当な取引を引き起こすと誤解されるリスクが指摘されるようになった」と説明する。 医療ガバナンスに詳しい尾崎章彦医師は「奨学寄付金は(大学などへの)キックバック的な側面があったのは事実」と指摘する一方、大学にとり研究資金確保は切実な問題で、「どのように(資金提供の)公平性を担保するかが重要だ」と話した。