ハナマサ乗っ取りで逮捕「バブル紳士」松沢泰生容疑者 本誌が26年前に垣間見た"闇の人脈"

11月11日の午前、警視庁中央署に移送されてきたその男は、署に着くかなり手前から頭を伏せていた。正面からは白髪頭のてっぺんだけが見える状態。通り過ぎる一瞬だけ、目をぎゅっと固く閉じた横顔が見えた。それが、バブル時代には“闇の紳士”と呼ばれ、その後も複数の経済事件で暗躍した男の現在の姿だった──。 不動産管理会社『ハナマサ』の株券や株式譲渡契約書を偽造したとして、警視庁暴力団対策課は11月13日、職業不詳の松沢泰生容疑者(74)、澤田洋一(76)、斎藤ゆかり(60)らを、有価証券偽造・同行使と有印私文書偽造・同行使の疑いで逮捕したと発表した。 松沢容疑者らは、共謀してハナマサの前代表男性(’22年8月死去)から、全株式を譲り受けたとする株式譲渡契約書と株券を偽造。ハナマサの株主権を巡る民事訴訟で、松沢容疑者が株主であることの証拠資料として、’23年3月と’24年1月に東京地裁へ提出していた。警察は3人の認否を明らかにしていない。 「登記の上では松沢容疑者は’23年1月にハナマサの代表に就任したことになっていました。しかし、代表就任を決定した株主総会は架空のもので実際には開かれておらず、不審に思ったハナマサの元代表が『会社が乗っ取られそうだ』と警視庁に相談していました。 ハナマサは’10年に株式の発行を停止したにもかかわらず、松沢容疑者が証拠として提出した株券は発行時期が’12年になっていました。裁判所は偽造したものと判断し、民事訴訟の1、2審は元代表が株主だと認める判決を出しています。松沢容疑者は上告していました。 ハナマサは’22年12月、埼玉県東松山市に所有する約4万㎡の土地を物流会社に10億円で売却。その日のうちに、8億円がハナマサから松沢容疑者が関係する2社に送金されました。警察は松沢容疑者らが株主や代表を装って、土地売却代金を得るために会社の乗っ取りを図っていた可能性があるとみています」(社会部記者) なお、ハナマサはかつてはスーパー『肉のハナマサ』を経営していたが、業績悪化によりスーパー部門を’08年に売却しており、現在資本関係はない。 松沢容疑者は、戦後最大の特別背任事件として政財界を揺るがした東京佐川急便事件で、渡辺廣康社長(当時)の「金庫番」として政界工作の資金づくりに暗躍し、バブル世界の“闇の紳士”と呼ばれた。この事件では245億円の特別背任罪で5年の実刑判決を受けている。 その後も’12年の中華レストラン大手『東天紅』株式の公開買い付け(TOB)を巡る証券取引法違反事件や、ベンチャー企業の架空増資事件で逮捕・起訴されている。 かつては政財界に広く人脈を持っていた松沢容疑者の“意外な人脈”を『FRIDAY』は26年前に目の当たりにしていた。当時の記事の一部を引用する。 ◆“オウムきっての武闘派”との会合 《名古屋駅近くのホテル内にある喫茶室。 ちょっとコワモテ風の男たちが、なにやら熱心に話し込んでいる。そして、ホテルの周囲では工事作業員を装ったと思われる、いかにも不審な男たちが彼らの動向に目を光らせていた。 男たちの正体はどう見ても、公安関係者。マークされていたのは、スキンヘッドにサングラスの中年男である。 名前はX。山口組系暴力団組長からオウムに入信した、オウムきっての“武闘派”といわれた異色の元信者だ。彼は一連のオウム事件の後、教団を脱会。現在は元オウム信者たちと集団生活を送りながら、「聖百光瑜伽(せいびゃっこうよが)密教の集い」を主催している》(1999年4月16日号より) X氏と話し込んでいたのが、前年に刑期を終えて出てきたばかりの松沢容疑者だった。なぜ、X氏が松沢容疑者に会っていたのか。当時、本誌が取材した元オウム信者の証言によると、この頃のオウムは教団の立て直しのために次々と不動産を購入していた。しかし、不動産取引に明るい人材がいないため、悪質ブローカーに引っかかることが多く、多額のカネをdだまし取られたようだ。そこで、元信者のX氏を通じて松沢容疑者に相談していたのだという。 本誌はX氏に事実関係について直撃したところ、「松沢という名前は聞いたことがないし、会ったこともない」と全面否定していた。松沢容疑者にも取材を試みたが、連絡が取れなかったようだ。 オウムまでもが泣きつくほど、かつて闇の世界では大きな存在だった松沢容疑者。74歳にして未だ現役であることが明らかになった。今回の逮捕でついに年貢を納めることとなるのだろうか。

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