６月に発覚したネコの大量死事件です。 １５０匹以上のネコが死んだ凄惨な事件はなぜ起きたのか。 関係者への取材を通してその背景に迫るとともに、同じ過ちを繰り返さないため私たちに何ができるか考えます。 【前田 美沙希記者】 「ネコが入ったケージが次々と車に積み込まれていきます。時折、鳴き声も聞こえます」 【預けていた人】 「死んでいてもいいから返してほしい。連れて帰りたい」 ６月、凄惨な事件が明るみとなった。動物愛護団体に所属する熊本市在住の女の自宅などから１５０匹以上のネコの死骸が見つかった。 様々な事情で飼えなくなった人たちなどからネコを預かり、里親探しの依頼を受けていたという。 熊本市からの刑事告発を受けた警察は９月、動物愛護法違反の疑いで女を逮捕した。 逮捕当時、「預かるネコが増えるにつれ費用や手間が増え、だんだん面倒になっていった」と供述していたという。 事件はなぜ起きたのか…。女が所属していた団体の代表に今回、話を聞いた。 【愛護団体の代表】 「ネコの保護依頼があったら『こういう依頼があるけど、大丈夫？いっぱいいるんじゃない？』と必ず聞いていたが、『他の人が空いているので大丈夫です』と言っていた。『今、何匹しかいない』と結構少ない数を言っていた」 長年、ボランティアで保健所に預けられた犬の里親探しに奔走してきたという代表。 団体の中で、ネコの保護活動を担当していた女は団体に内緒で多くのネコを預かっていたという。 【愛護団体の代表】 「『かわいそうな命を助けたい』という思いだったと思う。いつも口癖のように『私が助けなかったらどうなるの』と言っていた」 「なんで忙しさにかまけて（女の家に）行かなかったんだろう。物資が届いたときに『持っていくよ』と言っても『取りに行きます』と必ず言っていた。どうして無理にでも持って行かなかったんだろうと今でも思う」 （食い止めるのはどこだった？） 「難しいですね。どこだったんでしょうね。私はものすごく信頼していて、知識もやっぱりある程度あったので、本当に信頼しきっていた。『大丈夫です』という言葉を信じていた」 代表は、今回の事件の責任を取って団体を解散した。 救うことができなかった１５７匹のネコを供養しようと、１１月、複数の愛護団体の関係者などが慰霊碑を建立した。 【動物愛護団体フィリア 田尻 みゆき代表】 「『熊本事件』として絶対忘れてはいけない。そうでないと報われない。語り部として受け継いでいきたい」 【くまもと犬猫緊急災害チーム 山下 マキ事務局長】 「地域の無関心こそがどんどん孤独に追いやって、発覚が遅れるのは社会の問題。行政や保健所、愛護団体、支援センターが情報共有していくことも大事」 また、動物愛護活動に取り組む俳優の杉本 彩さんは活動の難しさについて次のように指摘する。 【公益財団法人動物環境・福祉協会Ｅｖａ 杉本 彩 理事長】 「途中から自分が受け入れられるキャパシティーが分からなくなってくる。同情だけで引き受けて最後は救うどころか、苦しめることになる本末転倒のパターンもある。何でも引き受けてくれる『神ボランティア』というようにあがめられると、人間は弱いので承認される喜びに満たされて断ることができないというケースもある。理由は様々だと思う」 家族、そして地域の一員となっている動物をいかに守っていくのか、悲惨な事件を繰り返さないためにも一人一人が自分の事として考える機会としたい。