高級腕時計のシェアリングサービス「トケマッチ」が2024年1月に突然終了した。トケマッチに預けられた腕時計を勝手に売ったとして、警視庁は26日、運営会社「ネオリバース」(大阪市中央区、解散)の元代表、小湊敬済こと福原敬済容疑者(44)=住居不詳=と同社元従業員を詐欺容疑で逮捕した。 サービス終了とともに、福原容疑者はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに出国していた。日本から約8千キロ離れた中東の国はどんな場所なのか。 外務省などによると、UAEと日本の時差は5時間。空路だと約10~12時間で行き来できる。面積は約8万3千平方キロメートルで、北海道とほぼ同じ広さ。人口は約1006万人(2023年)、在留邦人は4546人(同)という。 警察庁によると、事件の容疑者の引き渡しを相互に義務づける「犯罪人引き渡し条約」を締結しているのはアメリカと韓国だけだ。 ■ICPOを通じた外国への捜査共助・協力要請 年間1千件超 条約を結んでいない国に容疑者が滞在している場合、国際刑事警察機構(ICPO)ルートや外交ルートでの引き渡しを求めることになるという。 24年にはUAEを含む外国への日本側からの捜査共助・協力の要請はICPOルートで1169件、外交ルートで625件あった。 UAE・ドバイに滞在する容疑者に対して引き渡しを求めたケースは過去にもあった。ユーチューブ上で俳優らを脅迫したとして警視庁は23年3月、暴力行為等処罰法違反などの容疑で元参院議員の逮捕状を取得した。 だが、元参院議員は帰国の意思を示さない状況が続いたため、外務省が旅券返納命令を出したり、警察庁がICPOに国際手配を要請したりした。最終的に、同年6月に帰国し、逮捕された。 ある捜査関係者は「ドバイに逃亡しても、罪を免れられるわけではない。現地は犯罪者をかくまうと受け止められるのを真剣に嫌がり、適正な資料があれば積極的に日本の捜査に協力する。日本の捜査機関への信頼は厚い」と話した。(西岡矩毅、三井新)