逮捕時には情報の多くが秘匿される性犯罪。密室で行われる犯罪の実態は、法廷の場でようやくその一端が明らかになる。 「彼女を助けないといけないと思っていた」 12月下旬、長崎地裁の法廷でそう主張したのは、鹿児島県に住む無職の男(34)。16歳の少女を連れ去ろうとした「未成年者誘拐未遂」などの罪に問われている。 男は一貫して「救済」を強調するが、審理で浮かび上がったのは、あまりに身勝手な「欲望の二面性」だった。 ■「ホストで霊媒師」偽りの顔で近づいたSNS 黒いジャージ姿で法廷に現れた男。大柄な体格で、無造作な黒髪が肩まで伸びている。男と長崎県内の少女(Aさん・当時16)が知り合ったのは、カラオケ配信ができるSNSだった。 当時33歳の男は、年齢を28歳と偽り、「ホストや霊媒師をしている」と自称。家庭環境に悩んでいた少女の心の隙間に巧みに入り込んでいった。 ■「ネト彼」が流行っていた 2人の少女に対する罪で起訴 起訴状などによると、男は2025年5月、当時交際関係にあった長崎県内に住む16歳の少女(Aさん)を誘惑し、自身の住む鹿児島県に連れ去ろうとした未成年誘拐未遂、さらに別の少女(Bさん)の性行為をスマートフォンで撮影した児童ポルノ法違反の罪に問われている。 男: 「その頃『ネト彼』というネット上で付き合う関係が流行っていた。Aさんにどうしてもリアルで付き合って欲しいと言われ、16歳になるのを待って付き合った」「真剣に付き合っていた」「俺なら彼女の問題があるところをなおせると思っていた」 少女は母親との関係に悩んでいて、 「スマホをチェックされる」「ネットで知らない人と話すのは禁止」などと、男に不満を漏らしていたという。 ■「彼女を助けなければ」…誘拐?救出?男は少女のヒーローか? 2025年5月3日夜、2人は長崎市内のラブホテルから少女の母親へ電話をかけた。「交際を認めて欲しい」と話す少女。交際を認めない少女の母親。電話をかわった男と少女の母親は口論になったという。