労務管理なしが事故背景に 俳優ひき逃げの車 白タク疑い元社長逮捕

無許可の車で送迎する「白タク」営業をしたとして、警視庁交通捜査課は14日、送迎サービス業「ISANA」(東京都豊島区)元社長、小山田栄一容疑者(77)を道路運送法違反(無許可経営)容疑で逮捕したと発表した。キャバクラ店の依頼で従業員を送迎した車がひき逃げ死亡事故を起こし、発覚した。警視庁は、「闇営業」で本来必要な運転手の労務管理がなされていないことが事故の背景にあったとみて調べている。 ◇女性4人を送迎中の車が事故 事故は2025年10月16日午前2時45分ごろに発生。東京都練馬区の青梅街道で、自転車に乗っていた俳優の高橋智子さん(当時39歳)がワゴン車にはねられ、搬送先で死亡した。この車は自家用車(白ナンバー)だった。 警視庁や捜査関係者によると、車には事故当時、キャバクラでの勤務を終えた女性4人が乗っており、そのまま現場から走り去った。この事故捜査の過程で、白タクの疑いが判明した。 逮捕容疑は10月16日、国による「一般旅客自動車運送事業」の許可を得ずに、男性運転手(39)に依頼して、キャバクラの女性従業員6人を東京・新橋から新宿区西早稲田や埼玉県狭山市にワゴン車で送らせたとしている。 役員2人と法人としてのISANA社も同じ容疑で、運転手の男性ら3人は白タク行為のほう助容疑でそれぞれ書類送検された。いずれも容疑を認めている。 運転手の男性は、自動車運転処罰法違反(過失致死)と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕、起訴されていた。 ISANA社は24年に福祉施設の送迎サービスに従業員を派遣するとして設立された。実際はキャバクラ従業員の送迎により、25年10月までに1億7000万円を売り上げていたという。 ◇運転手は丸1日寝ていなかった 白タクは、正規のタクシーより料金が割安なケースが多いとされるが、法令を守っていないことで安全を損なうリスクがある。 警視庁によると、今回、白タク営業の疑いのある車を運転した男性は事故時、丸1日近く寝ていない状態だった。前日の午前5時半から午後4時まで別の運送会社で働き、仮眠しないまま当日午前1時半に東京・新橋でキャバクラ従業員を乗せて埼玉県狭山市への送迎を開始した。 ◇白タクが安全でない理由 国は、バスやタクシー業者が乗務員の疲労や睡眠の状況、飲酒の有無を確認するよう定める。しかし、小山田容疑者らはこうした労務管理をせず、依頼に応じて、在籍ドライバーの出勤可否をLINE(ライン)で問い合わせるだけだったとみられる。 男性は居眠り運転で事故を起こしたとされ、調べに対し「深夜の運転で眠かった。休憩すればよかったが、女性たちの予定に影響するのでできなかった」と話したという。 料金は距離換算だとタクシーで2万4000円程度だが、ISANA社はキャバクラ3店から計1万9000円で送迎を請け負い、男性に1万3000円を支払っていた。利用者にとって割安で、年末年始を除き連日稼働していたという。 車は誰かの自家用で、整備は個人任せ。運転手の労務管理もない。捜査幹部は「白タクは安全運転のための管理がなされていない。それが、今回のような重大事故につながった」と話している。【菅野蘭】

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