自賠責保険の代行請求の「第一人者」 独自考案の仕組みで過大請求か

「被害者請求 年間取り扱い1000件以上」。弁護士法違反(非弁活動)容疑で21日に逮捕された高萩慎司容疑者は、自動車損害賠償責任(自賠責)保険の代行請求を行政書士が担うための仕組みを全国に広めた「第一人者」として知られ、ホームページで大々的に宣伝していた。福岡県警などが異例の立件に踏み切ったのは、その仕組みが過大な保険金請求の温床になっていた恐れがあるからだ。 「被害者は痛いと言っている」。捜査関係者によると、高萩容疑者は保険金請求後、加害者加入の自賠責保険会社から「(被害者は)整骨院に本当に通っていたか」などと問い合わせを受けると異議を申し立て、自賠責の上限額(120万円)に近い保険金を引き出していた。こうした強気な対応の背景にあるのは、高萩容疑者が考案したとみられる請求の仕組みだ。 交通事故の賠償では、加害者が強制加入の自賠責保険以外に任意保険にも加入しているのが一般的で、任意保険会社が被害者側と示談交渉を進める。賠償額が決まれば、任意保険会社は一括して支払った後、自賠責保険会社に求償する。「一括対応」と呼ばれる方式で、被害者側は請求の手間を省ける一方、治療期間などを任意保険会社が厳密に判断するため、自賠責の上限額を下回るケースもある。 これに対し高萩容疑者は2020年、一括対応を拒否し、加害者加入の自賠責保険会社に被害者が直接賠償を求める代行請求業務を始めた。「被害者請求」と呼ばれる方式で、加害者側との示談を待たずに賠償請求できるため、請求通りの賠償を受けやすいという。 22年8月には、この仕組みを全国に広める一般社団法人を設立。自賠責保険の代行請求を行政書士がどこまで担えるかの線引きが曖昧な中、社団法人の会員は約60人に上る。25年12月には沖縄県で柔道整復師向けのセミナーも開き、被害者が受けた施術代を自賠責保険会社に請求する際の治療回数や単価の目安を紹介。「ほぼ120万円までは心配いらない」と上限額に近い請求を推奨するような説明もしていたという。 日本弁護士連合会の業際・非弁・非弁提携問題等対策本部で副本部長を務める向原栄大朗弁護士(福岡県弁護士会)は「最大の問題は、行政書士と整骨院が手を組み、施術実績とは異なる過大な請求が容易にできてしまう点にある。過大請求がまかり通れば保険料が上がり、被害者は国民だ。こうした構造を明らかにした意義のある事件だ」と話した。【金将来】

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