社説:きょう公示 自維連立、審判へ重大な機会

京都、滋賀でも、戸惑っている有権者は多いのではないだろうか。 高市早苗首相が国会に新年度予算案を提出して施政方針演説をする前に、衆院を解散したため、きょうから異例ずくめの総選挙(2月8日投開票)がスタートする。 積雪や感染症の多い真冬、受験期でもあり、855億円の税金を投じて、なぜ今なのか。「経済最優先」の前言を翻(ひるがえ)した高市氏の説明から大義はうかがえない。 だからといって、無関心や冷笑で貴重な審判の機会を見送ってはなるまい。国内外に厳しい環境が取り巻く日本の針路を定める投票である。交流サイト(SNS)などにあふれる真偽不明の情報に振り回されず、各党の違いを見極めて主権行使の1票を投じたい。 週末の傾向調査で内閣支持率はやや下がったものの、発足約3カ月で6割台を維持する。期待値と刷新感が高いうちに、新たな不祥事や疑惑が追及されて傷つかないうちに-。自民党の勢力を回復したいとの思惑は否めない。 「政治とカネ」済んだのか 高市氏は「私が首相でいいのか国民に決めてほしい」と訴えるが、衆院選は個人の人気投票ではない。一方、そうした姿勢を含めて政権・与党を認め、掲げる政策を進めるべきだと考える人にはアクセルの踏み時である。 逆に言えば、そこに危うさや不透明さを感じてブレーキをかけ、与野党伯仲の「熟議」を求める有権者にも意思表示の場となる。 判断材料として、三つの視点を提示したい。 まず、この2年余り政界を揺るがしてきた「政治とカネ」だ。1年3カ月前の衆院選、半年前の参院選で与党が大敗した主因は、物価高に加え、逮捕者を出した自民裏金事件への批判だろう。参院選総括で自民も「不信の底流として自覚し、猛省する」と明記した。 だが、高市氏は公明党に求められた政治資金改革を拒み、与党離脱を招いた。新たに組んだ日本維新の会は、参院選公約で掲げた企業・団体献金の禁止は棚上げし、議員定数の削減を持ち出した。 高市氏は裏金事件への対応を問われ、「そんなことよりも」と国会で発言。この衆院選で、参院選では自制していた「裏金議員」の全面公認、比例への重複(敗者復活あり)容認に転換した。公約でも献金の枠組みを維持する「透明性の強化」にとどまる。 高市カラーへの是非 衆院選の自維勝利で、政治とカネの問題は済んだことにしたいとみえる。最近も政治資金を巡り、高市氏をはじめ閣僚や与党幹部に不適正な扱いが次々と発覚してなお、「そんなこと」なのか。新たに韓国で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民の癒着を記す文書が見つかったことも含め、有権者の判断が問われる。 二つ目は、高市氏が持論とする右派色の濃い政策である。スパイ防止法、旧姓の通称使用拡大、武器輸出の拡大、そして憲法の改正だろう。いずれも維新とは合意しており、与党勝利なら実現化へ踏み出すことになる。非核三原則の「持ち込ませず」を見直す姿勢も見過ごせない。 スパイ防止法は「既存法で対応できる」との声が自民にもあり、国民監視の強化や言論・表現の自由を損なう恐れが懸念される。旧姓使用の拡大は、希望すれば結婚前の名字を使える「選択的夫婦別姓」を遠ざける狙いが透ける。 立憲民主党と公明が結成した「中道改革連合」などとは、立場の違いが目立つ部分だろう。 危うい減税、拡張財政 与野党とも力を入れる経済・財政策が三つ目だ。野党が消費税の減税・廃止を訴える中、自維も「減税の検討を加速」を公約とした。高市氏は「責任ある積極財政」を争点というが、有権者には違いが分かりにくく、「大盤振る舞い」の競争に映っていないか。 与党や主要野党が言うように食料品の消費税率をゼロにすれば、地方分も合わせ年5兆円の税収が減る。社会保障を賄う基幹税をどう穴埋めするのか。さらに社会保険料を下げるという政党も多い。 しわ寄せが医療や介護に及ぶなら、現役世代にも大きな影響がある。将来不安も広がろう。 そもそも拡張財政は需要を押し上げる。財源確保の国債増発(借金)は円安、債券安につながる。いずれも物価高の助長要因だ。すでに市場はダブル安傾向で「放漫財政」への警告を発している。 与野党とも中身の違いだけでなく、減税や債務増によるインフレリスクを含めて語るべきだ。 財政出動は一時のカンフル剤にすぎず、経済を底上げする主体は企業にほかならない。足かせは供給力の不足であり、それが物価を押し上げている面も大きい。特に中小の人材難は深刻だ。その点でも、外国人政策は重要になる。排外主義をあおらず、共生社会への道筋を明示してもらいたい。 前回の投票率は京都53%、滋賀54%で全国的にも戦後3番目に低かった。こうした視点を参考に、自分や家族に引き寄せて日本の課題を考え、あすからの期日前投票も活用して選択してほしい。

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