第2次世界大戦で連合国の勝利が迫っていた1945年4月25日、米国カリフォルニア州サンフランシスコで国際連合(国連)創設に向けた会議が開催された。米国、英国、中国、ソ連の連合国4大国を含む約50カ国の代表が出席したサンフランシスコ会議は、同年6月26日まで続いた。そして「正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し」と前文で宣言した国連憲章を採択し、幕を閉じた。その後、参加国が国連憲章を批准し、同年10月24日に第2次世界大戦後の国際秩序の主軸を担う国連が誕生した。 第1次世界大戦後に誕生したものの、第2次世界大戦の勃発を防げずに消えた国際連盟(LN)の運命を教訓として、国連は国際政治の現実を認めた。国際連盟は「総会または理事会のすべての会議での決定には、その会議に出席したすべての連盟加盟国の同意が必要である」として、全会一致制度を選択して大国の特権を認めなかったが、国連は第2次世界大戦の戦勝国である米国、ロシア、フランス、英国、中国の安全保障理事会の5つの常任理事国に拒否権を与えた。 その後、限界はあったものの、世界各国は表面的には国際法の尊重に努めていることを示そうとしてきた。国際的な非難が集中した2003年の米国によるイラク侵攻の際、米国はまず、国連の武力使用原則を示す国連憲章第7条に言及した決議案を通そうとした。結局、当時のジョージ・ブッシュ政権は決議することなしにイラクに侵攻し、国際的な批判を浴びたが、国際秩序を尊重するふりはした。 しかし、ドナルド・トランプ政権は今年初めにベネズエラに侵攻し、ニコラス・マドゥロ大統領を逮捕して米国に連れ去った際、国連を通じた外交的努力そのものをしなかった。トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるデンマークの自治領グリーンランドを獲得すると述べ、武力行使の可能性も一時示唆した。「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と宣言した国連憲章第2条第4項とは両立しえない態度だ。2022年2月末にウクライナに全面侵攻したロシアの安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は、ロシア国営タス通信とのインタビューで、グリーンランド獲得を主張する米国について「今や彼ら(米国)にはロシアを批判する形式的な口実すらない」と皮肉った。トランプ大統領は世論の悪化を受け、近ごろは武力は使わないと述べて一歩引いているが、信頼はすでに崩壊している。 米国が第2次世界大戦後に自ら主導して作りあげた国連中心の国際規範から逸脱することは以前にも頻繁にあったが、第2次トランプ政権の発足以降は戦後秩序そのものを意識していないようにみえる。カナダのマーク・カーニー首相はスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF:ダボス会議)での先月20日の演説で、そのことを鋭く指摘し話題となった。カーニー首相は、1978年にチェコの共産政権下で反体制派だったハヴェルが共産主義体制が維持される秘訣について記したエッセイを引用した。自分も信じず、他の人も信じない八百屋の主が、『全世界の労働者よ、団結せよ』という横断幕を掲げる光景をあげつつ、共産主義システムの力は真実から生じるのではなく、あらゆる人がまるで真実であるかのように行動しようとする意志から生じるのだというハヴェルの洞察を引用したのだ。 カーニー首相は、カナダのような国々は「ルールにもとづく国際秩序」と呼ばれる体制が部分的に虚偽であることを認識していたが、この「体制で繁栄を享受してきたため、修辞的表現と現実との間のギャップを指摘することを避けてきた」と指摘した。そして「この取引はもはや通用しない」として、今こそカナダのような中堅国は自ら立ち上がるべきだと述べた。英国BBCは「世界は第2次世界大戦前の秩序に戻りつつあり、中堅国は重大な新たな挑戦に直面している」と題する記事で、「戦争(第2次世界大戦)から数十年後に生まれた人々は、世界がそれ(世界大戦)に戻ることはないと信じるという過ちを犯すかもしれない」と指摘した。このような指摘が誤っているとは言いがたい時代になっている。 チョ・ギウォン|国際部長 (お問い合わせ [email protected] )