【和歌山】犯罪に関わっている疑いがあるので、警察であなたのお金を調べる必要がある――。警察官を装ううその電話で不安をあおり、金をだまし取る詐欺が県内で急増している。2025年は80件の被害が確認され、前年の25件、前々年の2件を大きく上回った。 昨年5月、橋本市の40代女性の携帯電話に着信があった。男とみられる人物は大阪府警の警察官を名乗り、「逮捕した男があなたの口座を買ったと言っている。その口座が犯罪に使われて、6千万円の詐欺被害が出ている。あなたにも逮捕状が出ている」と話した。 要求されてメッセージアプリのビデオ通話をつなぐと、「男」は警察手帳らしきものを見せた。警察官のような制服を着ていたため、女性は「男」を警察官と思い込んだという。 続いてメッセージアプリで電話をかけてきた検察官を名乗る人物が、女性の名前が入った「逮捕状」の写真を送ってきた。「マネーロンダリングをしていないことを立証するために、あなたのお金を調べる必要がある」などと言われた。女性は指示通り2回に分けて100万円と50万円を指定された二つの口座に振り込んだという。 女性は「警察がお金を振り込ませるのはおかしい」と不審に思い、橋本署に相談。だが、100万円を振り込んだ口座からは、すでに現金が引き出されていたという。署は今年1月20日、女性が50万円を振り込んだ口座から現金を引き出そうとした千葉市の男(41)を詐欺の疑いで逮捕。「全く身に覚えがない」と容疑を否認しているという。 県警は昨年12月だけで、こうした「身分詐称型オレオレ詐欺」の被害を少なくとも4件把握している。だまそうとする語り口も様々だ。 「携帯電話が停止される」と自動音声の着信から「警察官」につながり、「あなた名義の口座が詐欺に使われている。逮捕されたくなければ保釈金を払う必要がある」と迫るパターンがあった。また、「警察官」に犯罪に関与していないなら捜査に協力してほしいなどと言われ、金塊を購入させられ持ち去られたりするケースもあった。 県警生活安全企画課の川端宏季次席によると、警察官を名乗る人物から「犯罪に関わっている」と言われると「捕まるかもしれない」とパニックになり、詐欺を疑うことができない心理状態になってしまうという。川端次席は「警察がお金を要求することは絶対にない」と呼びかける。(榊原織和) ◇ 身分詐称型オレオレ詐欺は、電話などで対面することなく信頼させて不特定多数の者から金をだまし取る「特殊詐欺」の手口の一つ。特殊詐欺とSNSを悪用した「SNS型詐欺」を合わせ、2025年に県内で認知した被害は322件、被害額22億8882万円にのぼった。 一方、被害を未然に防いだ事例は、県警が把握している限りで被害件数を上回る480件あった。だまされて振り込もうとするのを金融機関の窓口職員やコンビニ従業員が水際で阻止したり、県警の「ちょっと確認電話」(0120・508・878)が活用されたりもした。 ちょっと確認電話は特殊詐欺被害を防止する専用フリーダイヤルで、詐欺を疑う電話がかかってきたときに匿名で相談できる(24時間対応)。 県警は昨年、特殊詐欺・SNS型詐欺にかかわった容疑で30人、58件を逮捕または書類送検した。24年比で16人、28件増えた。(榊原織和)