国内未承認の医薬品成分であるエトミデートの乱用が若い世代を中心に広がりを見せている。危険性を社会で認識し、まん延を許さない対策を徹底したい。 リキッド(液体)による密売が主流で、電子たばこで吸引できる。過剰摂取すると、手足がけいれんするなど体が異様な動きをするため「ゾンビたばこ」とも呼ばれる。 何より認識しておきたいのは、麻薬や覚醒剤と同様に、依存性の高い危険な薬物であるということだ。 エトミデートは脳の中枢神経を強く抑制でき、海外では麻酔導入薬など医療で使う国もある。副作用が強いため、数年前からアジア各国で乱用が問題となっていた。 日本では昨年5月、指定薬物として規制され、使用や所持、輸入などが原則禁止となった。これを受けて当局の取り締まりが本格化した。 初の摘発は沖縄県警で若者10人を逮捕、書類送検した。大半が10~20代で高校生もおり、意識障害から交通事故を起こしたケースもあった。福岡県や東京都、三重県などでも摘発が続き、ほとんどが30代以下だった。 主な流入経路は密輸のようだ。大分県警などがインドからシンガポール経由で不正に持ち込んだとして中国籍3人を逮捕した事件もある。日本国内で粉末から液体化し、電子たばこのカートリッジに詰めて密売したとみられる。 事態の深刻化を受け、昨年12月に木原稔官房長官が記者会見で「絶対に使用しないように」と呼びかけた。その後もプロ野球広島の選手が今年1月に使用容疑で逮捕され、衝撃が広がった。 残念ながら氷山の一角だろう。全国的にかなり広がっていると受け止めるべきだ。警察などによる取り締まりの強化はもちろん、海外からの持ち込みを各国と協力して防ぎたい。相談窓口や専門医療機関の拡充も欠かせない。 死亡を含む深刻な健康被害だけでなく、傷害事件や交通事故で他人を巻き込む事例も報告されている。こうした有害性を大人から子どもまで共有できるよう、啓発を強力に進めなければならない。 乱用者の多くが交流サイト(SNS)を通じて密売人と接点を持っている。秘匿性の高い通信アプリに広告まで出ており、普通の電子たばこのリキッドと見分けがつかない形で誘っているという。インターネット空間での対策は特に急がれる。 同時に課題として浮かんでいるのが電子たばこだ。リキッドを加熱して蒸気を吸引する仕組みのため、一見するだけでは何が含まれているか分からない。エトミデートに限らず、違法薬物が若者に浸透する入り口になっている。 電子たばこについて、世界保健機関(WHO)は青少年の成長に悪影響があるとして警鐘を鳴らしている。国内でも実効性のある規制を検討すべき段階だろう。