東京・池袋の商業施設で起きた、21歳女性店員刺殺事件。被害者は、かつて「ポケモンセンターで働くことが夢でした」と語っていた。 現場にいた人は「みんなが叫び声を上げながら外に出て行ったので、その流れに沿うように我々も出てきた。ちょっと振り返りざまに見たら、男っぽいのが1人、レジ辺りで暴れているように見えて。赤い血が付いた店員さんもいた」と話す。 目撃した人は「刃物を持った男が暴れている。男の人と女の人が血を流して倒れている」と証言した。 女性店員を襲ったとされるのは、元交際相手の廣川大起容疑者(26)。犯行の様子を防犯カメラが捉えていた。1人で入店した男は、そのままレジカウンターの方へ。カウンター内には店員が4人ほどいたが、襲ったのは21歳の女性店員だけ。廣川容疑者は自分でカウンターの扉を開け、女性店員の首などを複数回刺して、その後自分の首を切り、死亡した。 死亡したのは、ポケモンセンターのアルバイト店員で、八王子市在住の春川萌衣さん(21)。首付近に複数の刺し傷があった。 廣川容疑者は春川さんと自分の首を交互に刺し、自分自身も意識がなくなったという。警視庁によると、刃物にはタオルが巻き付けられ、ゴムのようなもので縛っている状態だった。 春川さんは廣川容疑者から度々ストーカー行為を受けており、警察にも相談をしていた。 2人は元交際相手で、出会いは2023年、八王子市内にあるファストフード店だった。バイト仲間だった2人は、2024年10月ごろから交際を始め、そして2025年7月ごろ、春川さんは念願だったポケモンセンターで働けるようになった。 ところが廣川容疑者は「お前には向いてない、やめろ」。そう言われ、春川さんは交際関係の解消を決意していたことが、捜査関係者への取材で分かっている。 廣川容疑者は当時、春川さんの自宅から、徒歩で約15分離れたところに住み、交際を解消した後も春川さんの自宅に訪れるなど、ストーカー行為を繰り返していたということだ。近所の人に話を聞くと、「春川さんの自宅周辺は閑静な住宅街で、もし人が家の前に立っていたりしたら、目立つのではないか」と話していた。 交際解消後も、同じ八王子市内に住んでいた春川さんと廣川容疑者。トラブルが明るみになるきっかけはクリスマスの頃。春川さんの自宅玄関に「連絡ください」と書かれた手紙や、ポケモンカードの入った紙袋が置かれていた。 12月25日の朝、春川さんは警察署に出向き、「元カレがつきまとってくる」と相談。最寄り駅から付いてこられたり、自宅前で待ち伏せされたりすることが、複数回あったという。 警視庁は相談を受けたその日、春川さんの身の安全を守るため、警察官を付き添わせて、自宅に送り届けると、その周辺を歩きながらじっと見つめる廣川容疑者を発見し確保した。 春川さんの写真を削除するよう促しても、廣川容疑者はかたくなに拒否。そしてこの時も刃物を所持していたため、ストーカー規制法違反の疑いで逮捕した。廣川容疑者は当時、「もうストーカー行為はしません。反省はしています。復縁をしたかったのです」と言っていたそうだ。 逮捕からひと月余り。警視庁は、つきまとい行為をやめるよう命じる禁止命令を出すと、検察は略式起訴し、廣川容疑者を釈放した。この時、廣川容疑者は「もう近づきません」と話していたという。警視庁は釈放後も、春川さんと定期的に連絡を取っていた。 春川さんは警視庁の依頼に基づいて自宅に防犯カメラを設置し、1カ月ほどの間、親族の家に避難。さらに警視庁は、勤務先も変えたらどうかと指導したが、春川さんは「仕事は変えたくありません。ポケモンセンターで働くことが夢でした」と話したという。 釈放後、神奈川県川崎市の実家に身を寄せていた廣川容疑者。警視庁は、容疑者の母親に様子を見守るよう依頼し、廣川容疑者にカウンセリングを受診するよう促したが、廣川容疑者本人が拒否したという。そして、警視庁は「取りうる最善の措置を取っていた」としているが、事件は起きてしまった。 容疑者はなぜ、あえて大勢の客がいる場所で犯行に及んだのか。犯罪心理学者の出口保行氏は、「他者に周知したかったことはあるのだろうと思う。それがこういうような犯行現場を選んだ、1つの大きな原因だろうと考えている」と語る。 「『こんなに思っている自分を受け入れられない相手が悪い』と、こういう場合は思う。それをストレスに変えていって、その瞬間に愛情が憎悪のようなものに変わっていく。思いが遂げられないことに失望していく。その原因を考えた時に、相手もやはり道連れにして死んでいこうとする。そういう心理が働いたのではないか。自分はこれだけの思いがあったんだと、(世間に)知らしめたいというような、半ばゆがんだ自己顕示欲でもあるが、これが非常に強かったのだろう」(出口氏) 廣川容疑者とはどんな人物だったのか。取材スタッフは廣川容疑者を知る人物を探し歩いてみたが、有力な情報は得られなかった。 なぜ救えなかったのか。春川さんを襲った不安と恐怖と痛み。そして21歳の夢を突然奪われた無念さを、私たちはどう受け止めれば良いのだろうか。 (『ABEMA的ニュースショー』より)