「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」が高齢者などを闇バイトの実行役として使い捨てにし、e‑Taxの仕組みを悪用して全国の税務署から多額の国税還付金をだまし取っていたことが、FNNの取材で分かった。制度の「性善説」を逆手に取った巧妙な手口と、犯罪と気付かないまま巻き込まれていく人々の実態に迫った。 ◆相次ぐ「e-Tax詐欺」 2024年11月、捜査員に囲まれ高知の空港に降り立った、横浜市の自称IT関連業、盛海斗被告(当時27)。Xには、盛被告の犯罪を告発する投稿があった。 「ある人物が違法な税金還付を行っています。私の手元にはその証拠があります」 取材班が投稿者に連絡を取ると、「正直に言うと、私は今日本の犯罪に関わっています」と返信があった。自らも犯罪に関わっていると言う人物が送ってきたのは、トクリュウによる違法な税金還付を示すデータだった。 その手口とは、「e‑Tax詐欺」だ。 まず、トクリュウはSNSで副業と偽り、全国から闇バイトを募集。その闇バイトに、e‑TaxのIDやネット口座を作らせ、情報をトクリュウに送らせる。 トクリュウは、その情報を使ってe-Taxで確定申告し、赤字が出たと偽って、税務署から闇バイトの口座に振り込まれた還付金をトクリュウに送金させるという構図だ。 高知県警は2025年4月、トクリュウの中心メンバーである盛被告とともに、全国の税務署から還付金をだましとった疑いで、容疑者を次々に逮捕した。 この事件での逮捕者は29人、被害総額は全国の税務署でおよそ3000万円に上った。 取材班が情報提供者から入手したデータには、闇バイトで集められた実行犯とみられる28人の名前と4人の運転免許証の写真も含まれていた。 このうちの2人を逮捕前に訪ねて、話を聞くことができた。 ◆「5万円が欲しくて・・・」 2025年9月に逮捕・起訴された、広島市の鈴木新一被告、75歳(取材当時)は、犯罪とは知らず、SNSの誘いに申し込んだという。 当時、借金を抱えながら生活保護費と年金で一人暮らしをしていた。 鈴木新一被告: (金に困っている?)今でも困っている。食べる物もない、全然。 2024年、鈴木被告の携帯に副業を紹介するショートメッセージが届いた。 「こちらのラインにて、収納代行業務全般のサポートを行って行きます」 鈴木新一被告: ぼくは75歳。人生、先が短い。5万円がほしかった。 鈴木被告が副業をしたいと送信したその相手は、トクリュウだった。 その後、ラインで次々と指示が―。 まずは、報酬を受け取るためとして複数のネット口座の開設を求められた。 その後、巧みに犯罪へと誘導。 鈴木被告はe-Taxが何のことか分からなかったが、携帯で指示を受けながらIDとパスワードを取得。口座の情報や暗証番号、さらに、運転免許証の写真もトクリュウに送信した。 すると、身に覚えのない国税還付金振込通知書が届いた。 ◆怪しいとは思わず 自覚なく加担 ネット口座を確認すると、税務署から96万円あまりの還付金が振り込まれていた。 トクリュウは鈴木被告に対し、ATMに行き、指定した口座に還付金を送金するよう電話で指示。 「出金後、明細書は画像で送ってください」「分からないことがありましたら、必ず外に出てラインしてください」「できそうですか?」 税務署からの還付金の振り込みは、合わせて5回あり、総額は455万円。指示を受けて6回に分けて、あわせて449万円をトクリュウに送金し、残った6万円が鈴木被告の報酬となった。 鈴木新一被告: (怪しいとかは)思わなかった。副業という気持ちをもっていたから。 鈴木被告は自覚がないままトクリュウの闇バイトとなり、還付金詐欺に利用されていた。 「ただ5万円儲かるということで必死。このまま済めばいいが」と話した鈴木被告だったが、取材から3か月後に逮捕された。 懲役2年4か月の、実刑判決を受け、その後控訴した。 ◆口座を乗っ取られ もう一人の実行犯、高知市の元自衛隊非常勤職員(当時46)。今年3月に、執行猶予付きの有罪判決を受けた。 「金がなかった」「パチンコもするし、ネットビジネスでだまされて、借金ができて債務整理中」 2024年、携帯に届いた副業案内のメッセージをきっかけに、トクリュウとつながる。すると2025年1月、税務署から国税還付金振込通知書が届く。 口座のお金について「引き出さないで」と指示され、そのままにしておくと2日後、別の口座に94万円が移されていた。口座を乗っ取られていたのだ。 男は、残った3千円をATMから引き出した後、5万円の報酬を求めるメッセージを相手に送信。 しかし、その後、担当者とは連絡がとれなくなったという。 ◆不正防止の課題 こうした中高年も含めた闇バイトは数百人に上り、わずかな報酬で、トクリュウに使い捨てられている。 そもそも、このe-Tax詐欺を、税務署はどうして見抜けなかったのか。 元税務署職員の小串和久税理士は、「原則、出てきた内容が真正か不正かは判断せずに事務処理は進み、中身を審査することはその都度はできない」と指摘。日本の納税制度が、申告内容を税務署が信用する「性善説」で成り立っていると説明する。 国税庁は取材に対し、「効果的な不正還付の防止や審査などの総合的な見直しを検討する」とコメントした。 あの手この手で制度の穴を付くトクリュウ。この穴を防ぐとともに、高齢者にも及んでいる「闇バイト」への勧誘を防ぐ手立ても求められている。 (「イット!」4月30日放送より)