不法残留の状態が約17年続いていたフィリピン国籍の女性が、強制送還処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁(篠田賢治裁判長)は13日、女性を「人身取引の被害者として保護すべき対象だった」と認め、国の処分を取り消した。 女性は2004年、群馬県内のフィリピンパブでダンサーとして働くため、半年間の在留資格を得て来日。経営者にパスポートを取り上げられ、店に約30万ペソ(約60万円)の借金があると告げられた。客との性行為を要求され、店から逃げた。 叔母のもとへ身を寄せたが、暴力団員との結婚を強要されそうになった。在留期限を更新できないまま、女性は交際していた日本人男性と車上生活を開始。22年に不法残留の疑いなどで逮捕され、有罪判決を受けた。23年、東京入管は女性に退去強制令書を出した。 判決は、パスポートを取り上げられて売春を強要されそうになった女性の状況について「(性的搾取などを目的とした)人身取引の典型的な事象と似ている」と指摘。こうした事情を考慮しなかった入管の処分は「合理性を明らかに欠く判断だ」とした。 国側は、女性が逮捕後に交際相手の男性と結婚したことについて「長期の不法残留という違法状態の上に築かれ、法的保護に値しない」として処分の正当性を主張したが、判決は「長年の共同生活を基礎とした真摯(しんし)な関係」と判断。女性を強制送還すれば、病気を抱えた男性の健康状態に深刻な影響が生じるなどとして、入管の処分は違法だと結論づけた。(上保晃平)