社説:郵便への国費投入 不祥事体質の改革妨げぬか

不祥事が相次ぐ日本郵政の郵便事業に対し、公的資金を投じて、政治への依存を高めることを憂慮する。必要な改革がおざなりにならないか。 郵便の全国ネットワークを維持するための交付金制度を2027年度から新設する郵政民営化法改正案などが成立した。 年間650億円規模の交付金を支払う。政府が持つ日本郵政株の配当などが原資で、事実上の国費投入である。 同社が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式を「当面の間」持ち続ける義務も負わせる。早期に完全売却するとした従来方針の見直しといえる。 これに先立ち、同社の子会社である日本郵便が手紙などの料金を値上げしやすくする改正郵便事業法も成立している。 国が料金の上限額を定める方式から、日本郵便の申請に基づいて認可する形に改め、決定までの手続きが簡略化される。 改正法は自民党を中心に野党を含む主要政党が議員立法として提出した。厳しい収益に対し、国民1人あたり約500円に上る手厚い公的支援である。 こうした動きを見越し、日本郵便は5月、サービスの料金見直し検討を28年度までの経営計画に明記した。集配拠点の大幅な集約や、郵便局の窓口営業時間の短縮拡大などによる「効率化」「最適化」も掲げている。 利用時間や送達日数などのサービス低下は否めない。とりわけ、人口の少ない地方に与える影響は甚大となろう。 取扱数量の減少で、郵便事業は苦境にある。25年度の郵便物数は117億通と、10年間で3分の2に減った。人件費や燃料費の高騰ものしかかる。 ただ、料金値上げは一昨年に行ったばかりで、短期間での負担増は郵便離れに拍車をかけかねない。 一方、日本郵便を巡っては昨年、配達員の法定点呼が不適切だったとしてトラック輸送などの事業許可が取り消された。顧客情報の不正流用のほか、今月には郵便物回収業務に関する汚職事件で元社員が再逮捕されるなど、不祥事が絶えない。 再発防止への検証や対策が不十分なまま、本来は国庫に入るはずの公費を注ぐことには疑問が残る。何より、デジタル化と人口減少が進み、顧客ニーズが激変する中、郵便がなすべき事業の範囲も含め、いかにネットワークを持続可能な形にするかという本質的な議論を欠く。 国会審議も与野党とも踏み込み不足だった。旧特定郵便局長らでつくる任意団体の全国郵便局長会は自民党の有力な集票組織であり、日本郵政グループ労働組合も野党の一部と関わりが深いことと無縁ではあるまい。 政治と国費に頼る構造が企業統治の抜本改革を妨げ、旧弊と指摘されて久しい官業体質を温存させないか。国会は厳しく監視する責務がある。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加