世界各国の性売買の取り締まりはどうなっているのかについて紹介してきた風俗ジャーナリスト・生駒明氏による当連載ではこれまでに「北欧モデル」「合法化モデル」「非犯罪化モデル」を紹介してきた。最終回となる第4回の前編では主にアジアで採用されている「禁止主義モデル」について取り上げる。 禁止主義モデルとは 「禁止主義モデル」は性売買を完全に違法とし、関わった者を処罰するものだ。「処罰主義」とも言われ、性を売ること・買うこと・斡旋・勧誘・場所の提供などが禁止される。具体的に何が罪でどんな罰を科すかは、国や社会によって異なる。 禁止主義は性売買そのものを”悪”とする道徳・秩序重視の考え方がもとにある。「売春は公序良俗に反する有害な行為で、性的な堕落だから、根絶すべき」という主張だ。原則的に性を売る当事者(主に女性)は”被害者”ではなく”加害者(犯罪者)”として扱われる。売春行為を非合法化することで、それにまつわるさまざまな”悪”を社会から除去するのが狙いだ。 20世紀半ばまで多くの国で採られていた方針であり、中国、フィリピンなど、今なおこうした姿勢をとっている国は少なくない。またアメリカ(売春宿が合法化されているネバダ州を除く)も代表的な国となる。 1961年に制定された『淪落(りんらく)行為等防止法』(’04年廃止)によって、長らく性売買を全面的に禁止してきた韓国は、禁止主義モデルを採用している国の一つである。 ’04年には『性売買特別法』が施行され、性売買斡旋業者の処罰が大幅に強化された。同法は基本的には「売買双方を処罰する」ものであるが、性を売る女性を非犯罪者化する北欧モデルの要素を取り入れて、「性売買で逮捕された女性であっても”強制された場合”は被害者として処罰しない」という規定が設けられた。