千葉県警の刑事経験者2人が職場を退職し、ストーカーやDV対応に力点を置く警備探偵事務所を立ち上げた。家族の反対を押し切って公務員の立場を捨てた根底には、捜査員時代に直面した警察の「限界」と、孤立してしまいがちな被害者たちの姿があった。 * * * ■相談やエスコート、シェルターも 千葉県警本部(千葉市)から徒歩わずか。雑居ビルの2階に、4月に開業したばかりの警備探偵事務所「新・選・組」はあった。県警元捜査一課刑事の植村翼さん(40)と鑑識課に在籍した須田信彦さん(52)が立ち上げた事務所だ。 17年前に所轄で出会った先輩後輩の関係。その名の通り新選組を愛してやまず、調査を担当する植村さんは「鬼の副長」土方歳三、警備担当の須田さんは局長・近藤勇のファンである。「新しいものを選んで取り組む」との理念も名前の由来だ。 事務所では、DVやストーカー被害などの相談に乗り、被害届を出すための助言や支援をしたり、時にはエスコートをする。場所は明かせないが、被害者が入居し、そこで働くこともできるシェルター(保護施設)も、ある業者と提携して用意した。 「どんなことでも、まずは気軽に相談に来てほしいと思います」 ■血まみれでも被害届を出そうとしなかった とにかく気さくで話しやすい2人だが、安定した公務員の立場を捨ててまで、民間事業に乗り出したのは、DVやストーカーの被害者が「孤立」している現実を何とかしたいという強い思いが合致したからだ。警察官時代に向き合った被害者たちはボロボロの状態なのに、どこにも相談できず、暴力や恐怖に耐え続けていた。 植村さんは、近隣住民からの通報で駆けつけた、あるDV被害の現場を思い返す。 「若い女性が血まみれで泣き叫んでいて、夫の拳にも血がついている。夫を逮捕して女性と幼い子供を保護すべき状況なのに、女性は被害届を出そうとしませんでした」 すべて私が悪い、子どもを犯罪者の息子にしたくないと、取り乱しながら必死に言葉を繰り出す女性の姿。もはや洗脳された状態だと感じた。 「女性は暴力を受けるたび、ケガや傷の写真を自分で撮影して残してはいたんです。ただ、それ以上は何もしてこなかった。その先に何をどうすればいいのかがわからず、相談する人もおらず、行動できなかったんです」(植村さん) ■警察の「限界」感じた 被害届を出してもらわなければ警察は介入できない。だが、被害者なのに、なぜか自分を責めてしまい被害届を出そうとしない人がいる。暴力をふるう夫と共依存状態になってしまい、そこから抜け出せない被害者もいた。やっと被害届を出してもらい夫を逮捕したのに、「取り下げたい」と願い出たケースもあった。 警察の「限界」も感じた。