セ・パ両リーグは31日から再開する。後半戦で巻き返しを期す広島に、また水を差す事案が起きた。球団は30日、矢野雅哉(27)、前川誠太(23)両内野手が広島県警の家宅捜索を受けたと発表。矢野に続き、前川の出場選手登録を抹消した。鈴木清明球団本部長は容疑について「令状は見ていないが、一連の流れの捜査だと思う」とし、「ゾンビタバコ」と呼ばれる指定薬物のエトミデート関連であることを示唆。松田元(はじめ)オーナー、新井貴浩監督は相次いで謝罪した。 鯉のもがきを妨げるかのように、その尾ひれに、またも暗い疑惑がまとわりついた。矢野、そしてこれまで名前が出ることがなかった前川が、広島県警から家宅捜索を受けた。 捜索容疑は明らかにされなかったが、報道陣に対応した鈴木清明球団本部長は「令状をわれわれは見ているわけではないですけど、一連の流れの捜査だと思います」とし、「ゾンビタバコ」などと呼ばれる指定薬物のエトミデート関連であることを示唆。矢野は自宅、前川は寮で捜索を受けた。 これを受けて球団はこの日、17日に一部週刊誌に羽月隆太郎元選手に指定薬物を譲渡したとして逮捕、起訴された会社役員と所属する現役3選手らが同席する写真が掲載された問題で出場選手登録を抹消した矢野と同様に、前川を抹消。同本部長は「(疑念が晴れるまで)どの程度かかるか全然分からない。捜査が終わるまではちょっと分からない」と話すにとどめた。 リーグ戦再開を翌日に控えたタイミングで走った衝撃。特に新たな名前が出てきたことは、球団全体に大きな動揺を与えた。 この日は松田元オーナーも報道陣に対応し「キャンプ前、シーズン開幕前、後半戦が始まる前にいつもこういう問題が起き、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいです」とファンに謝罪。前川の名前が新たに出てきたことで「驚いている。われわれが考えている選手とは違う選手(の名前)が出てきたのでショックが大きい」と騒動の拡大に懸念を示した。その上で「一生懸命にやっている選手が同じように扱われたり、疑われることが気の毒でしょうがない。一生懸命やっている選手のことを考えたらつらい」と、涙ながらに言葉を絞り出した。また、マツダスタジアムでの練習後に対応した新井監督も「明日から後半戦が始まるというときに、またこのような形で、皆さまにご迷惑をおかけして本当に申し訳ないです」と謝罪した。 今年1月、医薬品医療機器法違反の疑いで羽月元選手が逮捕されたことに端を発した疑惑の連鎖。今後について、鈴木球団本部長は「(警察と)協力してやっていきたいと思います」と話した。一日も早くファンの信頼を取り戻すべく、真相究明に力を注ぐ。 ≪ゾンビタバコ問題経過≫ ▽1月27日 指定薬物のエトミデートを使用したとして、医薬品医療機器法違反の疑いで羽月容疑者を逮捕。羽月容疑者は「使った覚えはありません」と容疑を否認。 ▽同28日 球団が羽月容疑者に活動停止の処分を下したと発表。 ▽同29日 広島県警が羽月容疑者を送検。 ▽同30日 広島県警がマツダスタジアムほか関係先を家宅捜索。 ▽2月6日 羽月容疑者が、エトミデートの使用を認める趣旨の供述を始める。 ▽同17日 広島地検が羽月容疑者を起訴。 ▽同18日 羽月被告が保釈。 ▽同25日 球団が羽月被告との契約を解除したと発表。 ▽5月15日 羽月被告が広島地裁で開かれた初公判で起訴内容を認める。即日結審し、拘禁刑1年、執行猶予3年の判決。 ▽7月17日 羽月元選手に指定薬物を譲渡したとして逮捕、起訴された会社役員と一緒に写った写真が一部週刊誌に掲載された問題で、矢野雅哉の出場選手登録を抹消。 ▽エトミデート 使用直後から激しいめまいや手足の震えなどが起きる。立ち上がろうとしても体が硬直する、フラフラと真っすぐ歩けない様子などが“ゾンビ”を連想させる。近年は、液体を加熱して蒸気を発生させる電子タバコで吸引できるリキッド状になっていることから「ゾンビタバコ」と呼ばれる。国内では10~20代の若者を中心として特に沖縄県で逮捕者が続出。手軽な入手ルートも問題になっている。 ◇矢野 雅哉(やの・まさや)1998年(平10)12月16日生まれ、大阪府出身の27歳。兵庫・育英から亜大に進み、20年ドラフト6位で広島入団。24年にゴールデングラブ賞を獲得。通算成績は454試合で打率.224、6本塁打、70打点。1メートル71、72キロ。右投げ左打ち。 ◇前川 誠太(まえかわ・せいた)2003年(平15)4月4日生まれ、京都府出身の23歳。福井・敦賀気比では3年時に春夏連続甲子園出場。21年育成ドラフト2位で広島入団。25年7月28日に支配下選手登録された。通算成績は53試合で打率.160、11打点。1メートル76、66キロ。右投げ右打ち。