「無罪」主張の父・修被告(61)「違うなと思うところがいくつかあります」元裁判官が裁判の争点を解説【すすきの首切断】

2023年7月に札幌・ススキノのホテルで男性が殺害され、首を切断された事件。 男性を殺害した田村瑠奈被告の父親、修被告の裁判員裁判が14日、札幌地裁で始まりました。 「違うなと思うところがいくつかあります」。修被告は、無罪を主張しました。 堀内大輝アナウンサー 「午前8時45分です。修被告の初公判の傍聴券を求めて続々と人が中に入っていきます」 2023年7月に札幌市ススキノのホテルで男性が殺害され、首を切断された事件。 男性を殺害した田村瑠奈被告の父親、修被告(61)の裁判員裁判が14日、札幌地裁で始まりました。 事件から1年半。黒いスーツ姿で法廷に現れた修被告が口にしたのは、「無罪」の主張でした。 田村修被告(61) 「違うなと思うところがいくつかあります」 貴田岡結衣記者(2023年7月) 「遺体発見から一夜明けましたが、このように現場のホテルでは規制線が張られ、中では現場検証が行われています」 男性を殺害した娘とその両親の、親子3人が逮捕・起訴された異例の事件。 娘の瑠奈被告はススキノのホテルの浴室で当時62歳だった男性会社員を殺害し、のこぎりで首を切断。 頭の部分をキャリーケースに入れて自宅に持ち帰り、刃物で眼球を取り出すなどした殺人や死体遺棄・損壊などの罪に問われています。 父親の修被告は事件当日に瑠奈被告を現場のホテルまで車で送ったほか、犯行に使われたのこぎりやキャリーケースを事前に買い与え、瑠奈被告が遺体を損壊する様子をビデオで撮影するなど、犯行を手助けした罪に問われています。 修被告は14日の初公判で、事前に用意したメモを読み上げ、娘による男性の殺害計画について「知らなかった」と強調。 先に裁判が始まった母親の浩子被告(62)に続き、無罪を主張しました。 田村修被告(61) 「娘から「頭部を隠したい」と言われたことはなく、隠そうと思ったこともない。ただ何もできなかっただけ」 これに対し、検察側は男性への殺意を抱いた瑠奈被告から犯行の前の月に「ディスカッションがしたい」と言われ、親子3人で話し合いをした時点で、修被告も殺害計画を知ったと指摘。 遺体の損壊についても、修被告がビデオ撮影を担当したことで、瑠奈被告が両手で遺体を損壊することが可能になったなどと、ほう助の罪が成立すると主張しました。 一方、弁護側は、修被告は瑠奈被告から「被害者の男性が謝ってくれたので許すことにした」と聞いていて、「殺したい」などという言葉は聞いたことがなく、犯行の計画は知らなかったなどと無罪を訴えています。 娘の犯行を知った後も、警察に通報しなかった修被告。 田村修被告(61) 「警察がすぐ来ることは分かっていたので、残された時間を娘と一緒に過ごすことで精いっぱいだった」 裁判は15日も開かれ、判決は3月12日に言い渡される予定です。 ■父親・田村修被告(61)が問われている4つの罪 起訴状によりますと、父親の修被告は、殺人ほう助、死体遺棄ほう助、死体損壊ほう助、死体領得ほう助の4つの罪に問われています。 具体的には… 1)瑠奈被告をホテル付近まで送迎 2)のこぎりやキャリーケースを購入・提供 3)自宅に頭部を隠匿することを容認 4)頭部損壊の様子を撮影 これら4つの行為を、瑠奈被告の犯行の事情を知りながら手助けしたとされています。 ■裁判の争点 争点はおもに2つです。 争点1)瑠奈被告の犯行計画を事前に知っていたか 争点2)修被告の行動が犯行の手助けになったか 修被告は、14日の初公判で「違うと思う点がいくつかある」と述べ起訴内容を否認しました。 ■元裁判官 内田健太弁護士の解説…争点のポイントは? 一番のポイントは、一番重い罪である殺人ほう助罪が成立するかどうかです。 殺人関連ですと、凶器を渡し、それが実際に使われているとなると、客観的に犯罪を容易にしたことは間違いないので、犯行計画を事前に知っていたかどうかという、争点1が特に重要だと考えています。 ■初公判での修被告の主張 修被告は「違うと思う点がいくつかある」と話し、起訴内容を否認しました。 1)ホテル付近まで送迎 →「(犯行について)自宅に帰ったあとで知った」 2)のこぎりなど提供 →「化粧品など一緒に買って支払いをしただけ、殺害や損壊の目的は知らなかった」 3)頭部隠匿を容認 →「娘から頭部を隠したいと言われたことはない。ただ何もできなかっただけ」 4)損壊の様子をビデオ撮影 →「(妻の)浩子から頼まれただけで具体的な中身は知らなかった」 ■元裁判官 内田健太弁護士の解説…「未必の故意」とは? 大事なのは、「未必の故意」が認められるかどうかだと思います。一般的に、「故意」というと、かなり積極的な意思で犯行に関与した場合、つまり今回の場合は、計画を確定的に知っていて「のこぎりを渡したら、殺人に絶対使われる」と思いつつ、手助けする意思で積極的に渡したということです。 法律的な「故意」は、もう少し広くて、計画を確定的に知らなくても「のこぎりを渡したら、殺人に使われる可能性が高いことは知りつつ犯行に使われても仕方ないか」と消極的に認容した場合であっても、「故意」が認められることになります。 過失との境界線的な「故意」のことを、法律上「未必の故意」といいます。「未必の故意」が認められるかどうかが、ポイントになります。 「故意」は、被告本人の主観なので、本人が否定している以上直接的な証拠はありません。検察側は、客観的な状況から、立証していく必要があります。 凶器を渡しているという客観的な状況、渡すことについてどういう説明を受けていたのかなどの客観的な状況を積み重ねていって、こういう状況でのこぎりを渡したら「未必の故意」があると客観的に判断せざるを得ない状況があるかどうかがポイントになってきます。 殺人の可能性を予見できるような状況だったかどうかということを、やりとりから立証していくことになるかと思います。 堀内大輝キャスター) ナイフに関して、検察側は「修被告が、のこぎり、ナイフなどを買い与えたことが計画を知っていたことになる」と主張していますが、一方、弁護側は「瑠奈被告が『心が弱っているのでお守り代わりにナイフが欲しい』と修被告に言って買ってもらった」「以前から趣味で、ナイフを集めていた」ということもあったので、疑問を持たずに購入した」という主張をしています。 ■元裁判官 内田健太弁護士の解説…裁判員裁判としての行方は? 裁判員裁判ということで、一般の国民が判断に加わります。裁判官だけでやる裁判より、ストーリーが重要だと思います。 一般の人が見て、ストンを落ちるようなストーリーを、検察側、弁護側、どちらが組み立てられるかだと思います。 検察側としては「普段から異常なことをしているのだから、今回もその延長で、殺人をやることも『未必の故意』があっただろうと立証したいでしょうし、弁護側は「普段から異常なことを言っていたけれども、殺したことはなかった。だから今回は『未必の故意』はなかった」と、お互い、それぞれのストーリーを主張していって、それがいかに証拠に基づいて、合理的に証明できるかが重要になってくると思います。 ■元裁判官 内田健太弁護士の解説…瑠奈被告の裁判への影響は? 直接的には、瑠奈被告の裁判は、責任能力が問題になってくると思います。 責任能力は、計画性や犯行前の異常な言動があるかなども重要な要素であるため、修被告の裁判で認定された瑠奈被告の言動などが、責任能力に、後で影響を与えることは十分にあり得るといえそうです。 修被告の裁判は、予備日も含めて12回予定されていて、15日も午前11時から行われています。 判決は3月12日に言い渡されます。

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