与党をかさに着た利益誘導の政治に他ならない。閣僚である以前に、政治家として資質を欠くのは明らかである。 簗(やな)和生農林水産相が、衆院選で自身を支援しなかった首長がいる自治体の道路予算を大幅カットしたとの発言を認め、謝罪した。 憲法は、閣僚や国会議員を含む公務員は、特定の支持者や政党の利益でなく、全体の奉仕者であることを求めている。 選挙に有利になるように予算配分を操作すれば、行政の中立性をゆがめる。税金を私物化するような物言いで自治体をどう喝する者に、大臣を任せるわけにはいかない。即刻辞任すべきだ。 自民党裏金事件にも関与していた議員を、あえて登用した高市早苗首相の任命責任が問われる。 簗氏は2月の衆院選で栃木3区から立候補したが、小選挙区で無所属候補に敗れ、比例復活した。 問題の発言は、5月に開かれた地元会合であった。首長が対立候補を応援した2市町を名指しして予算を削ったとし、「首長が自民の国会議員はいらないという行動を取ったわけだから」「多くの市民、町民がそのような判断をした」とも述べている。 自らが党の筆頭副幹事長であることにも触れており、意に沿わない自治体への報復を誇示するような言葉にあきれる。 発言への批判を受け、簗氏は国土交通省に予算配分を問い合わせたことは認めたが、削減の働きかけは否定した。 だが、選挙区の他の自治体では国からの交付金が増えた一方、2市町は交付金が約5〜6割も減っている。国交省は働きかけはなかったというが、本当に政治的な圧力や官僚の忖度(そんたく)がなかったのか。 問題の根は、一政治家の振る舞いにとどまらない。 簗氏は、旧安倍派議員が逮捕された派閥裏金事件にも名を連ねている。還付金1700万円を政治資金報告書に記載せず、党役職停止6カ月の処分を受けた。 高市氏は全容解明や再発防止には手をつけず、2度の衆院選を経たとして閣僚に登用した。今回の問題が発覚した後も、簗氏には続投を指示したという。 衆院選の圧勝以来、与党のおごりは目に余る。簗氏の言動も、「政治とカネ」への国民不信を軽んじる慢心と通じていよう。 予算配分の公平性が疑われる事態に、野党からは「全省庁で調査が必要」との声が上がる。臨時国会でも徹底追及してもらいたい。