ノルド・ストリーム爆破、ウクライナ人被告の裁判がドイツで始まる

ジェシカ・パーカー・ベルリン特派員(ハンブルク)、ポール・カービー欧州デジタル編集長ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン「ノルド・ストリーム」が2022年に爆破された事件で、関与したとして起訴されたウクライナ人の男性被告の裁判が14日、ドイツ・ハンブルクで始まった。現代欧州史に刻まれた劇的な破壊工作は、発生から4年たって最初の裁判を迎えた。戦争犯罪で起訴されているのは、セルヒイ・クズネツォフ被告(50)。2025年8月、イタリアのアドリア海沿岸のリゾート地リミニ近郊のホテルにチェックインした後、ドイツ連邦検察が発行した欧州逮捕状に基づき、警察に逮捕された。昨年ドイツに身柄を引き渡され、起訴された。ドイツ検察は、被告がパイプライン破壊工作チームで主導的な役割を果たしたと主張している。また、この事件は「民間施設に対する軍事的手段による攻撃」であり、ドイツの国際法違反犯罪法典における戦争犯罪に当たるとしている。被告側は罪状を否認し、公訴棄却を求めている。被告はこの日午前、傍聴者で満席の法廷に落ち着いた様子で入廷した。氏名や出生地を確認する最初のやり取りなどでは、笑顔を見せる場面もあった。検察が被告について、民間インフラへの攻撃を潜水士と爆発物専門家に命じたとする起訴内容を読み上げると、ヘッドホンを装着した被告はウクライナ語での通訳を真剣に聞いている様子だった。弁護側は法廷で、爆破事件から4年たっても状況証拠しか存在しないと主張した。イタリア人のニコラ・カネストリーニ弁護士は、裁判所の前でBBCの取材に対し、「(検察は)4年間徹底的な捜査をした」、「目撃者は1人も見つからず、科学的証拠もDNAも指紋も何も見つからなかった!」と話した。弁護団はまた、被告は兵士で秘密保持義務があり、自らを弁護することができないため、公正な裁判を受けられないと裁判で主張。ドイツへの身柄引き渡しについては、戦争犯罪の容疑について一切言及されずに行われたため、不当だと訴えた。被告はこれまで、検察から「セルヒイ・K」と呼ばれ、顔写真にぼかしがかけられていたが、裁判所の広報によると、そうした扱いを受ける権利を被告は放棄したという。この事件では、2022年9月26日にデンマーク領ボーンホルム島沖のバルト海で、ガスパイプライン4本のうち3本が爆発物で破壊された。欧米では当初、ロシアが実行したとの見方が大勢を占めた。だが、徐々にウクライナの関与を示すものが浮上した。ウクライナ当局は、いかなる関与もしていないと繰り返し主張している。今年8月には、爆破への関与が疑われている別のウクライナ人男性が、クロアチアで逮捕された。男性は容疑を否認しており、ドイツ検察が求めている身柄の引き渡しに抵抗している。■ドイツにとってデリケートな問題この事件は、ドイツにとって非常にデリケートな問題となっている。ドイツは、ロシアの侵攻を受けているウクライナの最も緊密な支援国の一つ。ロシアによる本格侵攻が2022年2月に開始されて7カ月後にパイプライン爆破が発生すると、スウェーデン、デンマーク、ドイツが捜査に乗り出した。スウェーデンとデンマークは捜査を打ち切ったが、ドイツ検察は継続し、同国北部の港町ロストックでヨットを借りていた深海ダイバーのグループに捜査の焦点を絞った。そして、「船から採取されたサンプルから海底爆発物の痕跡が発見された」と発表した。ウクライナとの関係に緊張が生じるなか、ドイツ連邦裁判所は2025年1月、この事件は同国の領土管轄権の範囲内であり、「(ドイツの)国内安全保障を損なう」事象であることから、ドイツ検察には行動する責任があるとの判断を示した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は一貫して、爆破事件にウクライナは「一切関与していない」と主張している。しかし、ドイツ検察は起訴状で、破壊工作員らが「ウクライナの国家機関の命令を受けて」この計画を企てたとしている。この事件では、ウクライナとドイツの見解の違いが浮き彫りになっている。ウクライナ議会の外交委員会のオレクサンドル・メレジコ委員長は、パイプライン爆破はロシアとの戦争中に起きたことで、「ノルド・ストリーム2は、ロシアが戦争準備のために利用した道具に過ぎなかった」とBBCに話した。ドイツ側の主張については、確認が取れていないとメレジコ氏は説明。「一つの説に過ぎない」とした。一方、ドイツのシンクタンク「独外交問題評議会」のシュテファン・マイスター氏は、この件を政治化させないために、歴代の独首相はできる限りのことをしてきたと説明した。ドイツ検察は、クズネツォフ被告について、爆破事件があった2022年当時、ウクライナ軍の現役将校だったとし、プロのダイバー、船長、爆発物専門家らでつくるグループを率いていたと主張している。被告がイタリアで法廷闘争を繰り広げている間、別のウクライナ人ウォロディミル・ジュラヴロフ容疑者が、事件に関わったとしてポーランドで逮捕された。容疑者は、ドイツによる身柄引き渡し請求に対し、ポーランドの裁判所で異議を申し立て、勝訴した。ポーランドの裁判官は2025年10月、パイプラインへの攻撃は違法ではなく、ウクライナが作戦を組織したとしても「正当で合理的かつ公正」だったとして、容疑者の釈放を命じた。ジュラヴロフ容疑者は釈放されたが、今年8月にクロアチアで、破壊工作に必要な潜水作業に参加した容疑で逮捕された。クロアチアは先月、容疑者の身柄引き渡しを承認した。ただ、実行の時期や、ハンブルクでの裁判との併合については、明らかではない。ウクライナ議会のオレクサンドル・メレジコ議員は、同国とドイツにとって難しい問題ではあるものの、この件が両国関係を損なうとは考えていないと説明。「私たちを支援し続けることはドイツにとって最善の国益となる」と述べた。(英語記事 Germany puts Ukrainian on trial accused of blowing up Nord Stream pipelines)

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