さらなる「全斗煥ワナビー」の登場を防ぐためは 【コラム】

43日間にわたり、ソウル漢南洞(ハンナムドン)の官邸で繰り広げられた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の「闘争」は、京畿道果川(クァチョン、高位公職者犯罪捜査処)と義王(ウィワン、ソウル拘置所)に舞台を移して続いている。15日の逮捕の渦中にも、丁寧に動画メッセージと自筆の手紙を発表したうえ、検事の前では名前と住所さえ答えなかったという。尹大統領はご飯を食べる時以外は口を固く閉ざし、調査2日目の16日は取り調べにも応じず拘置所に留まった。逮捕状の執行が「違法に違法を重ねた違法」だという主張に合わせ、弁護団は逮捕適否審を請求し、最後まで時間引き延ばしを続けた。もちろん尹大統領が沈黙を守ったとしても、12・3内乱を陣頭指揮した「活躍ぶり」は、キム・ヨンヒョン前国防部長官をはじめとする内乱重要任務従事者の控訴状ですでに確認済みだ。内乱首謀の容疑は捜査と裁判で究明され、大統領の資格があるかどうかは、近く憲法裁判所で決まるだろう。ただし、それとは別に、大韓民国の第20代大統領が全斗煥(チョン・ドゥファン)の粛軍クーデターと5・17非常戒厳の拡大を2024年に再現した「無謀さ」の根源は必ず究明しなければならない。 国会の素早い戒厳解除決議のおかげで「6時間の天下」に終わったが、12・3非常戒厳の本質は「尹錫悦大統領の独裁宣言」だ。戒厳宣言直後、パク・アンス戒厳司令官の名前で名義で発表された「布告令」は、尹大統領の怒りがどこに向かっているのか、何を欲望しているのかを明確に示すテキストだ。布告令は「反国家勢力の大韓民国体制転覆の脅威」を掲げ、政治家とマスコミ、労組、専攻医など目の上のたんこぶを「処断」するという意志に満たされている。布告令の違反者は令状なしに逮捕・拘禁・家宅捜索できるようにするなど、国民の基本権を制限する内容が次々と並べられた。特に「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じる」という布告令第1号は、1987年の民主化以後、憲法から削除された大統領の国会解散権を実質的に行使するという宣言だった。 このような脈絡で「不正選挙の究明」に対する尹大統領の執着は、単なる妄想症患者の騒ぎではなく、野党が掌握した国会を無力化するためのカギだった。すなわち、戒厳令宣布→選管委掌握後、不正選挙の「証拠」の確保→国会解散→国家非常立法機構設置および立法権掌握につながるビッグピクチャーの中心軸である。三権分立を基盤にした民主主義を破壊する独裁の始まりだ。実際に尹大統領が戒厳国務会議でチェ・サンモク企画財政部長官に渡したメモには「国会関連資金の完全遮断」、「国家非常立法機構関連の予算編成」などの指示が記されていた。戒厳勢力が国会より中央選挙管理委員会に軍を先に送り、選管委サーバーの確保などを試み、不正選挙疑惑を捜査するための合同捜査本部第2捜査団の新設を早目に計画した理由でもある。ノ・サンウォン元情報司令官は、「(選管委の職員を)捕まえて脅せば、不正選挙をした証拠が出てくるだろう」、「ノ・テアク(選管委員長)は、私が直接担当する」とし、野球バット、ケーブルタイなどを用意するよう指示した。拷問も辞さないという意味だ。もし戒厳が成功していたら、大韓民国は1980年の姿と大きく変わらない姿になっただろう。 全斗煥は1980年5・17非常戒厳を全国に拡大した後、光州(クァンジュ)の市民を虐殺した。政治家と在野民主化運動家、学生など数千人余りを逮捕・拘禁し、国会を解散しこれに代わる国家保衛立法会議を設置した。国家保衛立法会議は新軍部の挙手機として、政治活動の規制、労働改悪、国民の基本権を侵害する悪法を次々と可決した。尹錫悦大統領の12・3内乱はこれを正確に模倣している。非常戒厳宣言後、ウ・ウォンシク(国会議長)、イ・ジェミョン(共に民主党代表)、ハン・ドンフン(国民の力前代表)など主要政治家と選管委職員は有事の際、戦争指揮部として活用されるB1バンカーに収監する計画だった。拷問を行い不正選挙の証拠を捏造し、これを名分に国会を解散した後「国家非常立法機構」を設置することで、立法権まで手に入れようとした。この過程で、国民に銃口を突きつけることが起きないと、誰が断言できるだろうか。 大統領選候補時代、全斗煥を称賛する発言で非難された尹大統領は、「全斗煥の道」を再現しようとしたが、憲政史上初めて逮捕される現職の大統領になった。尹大統領が2024年に軍を動員した親衛クーデターを図ることができたのは、韓国現代史で国民によって断罪されたクーデターがないためだ。全斗煥はしばらく刑務所暮らしをしただけで、誰にも謝らないまま、豪華な暮らしをした挙句、自然死した。「 内乱首謀」の容疑者である尹錫悦大統領の末路がこのようであれば、また別の「全斗煥ワナビー」の登場につながるだろう。 チェ・ヘジョン|論説委員(お問い合わせ [email protected] )

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