女性への傷害容疑で逮捕された中村児太郎、大名跡“歌右衛門”継承に影響…候補に「七之助」が浮上

10月21日、歌舞伎役者の中村児太郎が、知人女性に暴行を加えたとして傷害容疑で逮捕されていたことがわかった。調べに対し、「間違いない」と容疑を認めており、現在は釈放されて任意で捜査が進められている。 祖父は人間国宝の七代目中村芝翫、父は九代目中村福助という女形の名門・成駒屋に生まれた児太郎。2025年6月には『週刊新潮』に妻への暴力行為が報じられ、離婚協議が始まっていた。 歌舞伎関係者は、今回の事件についてこう語る。「前回のDV報道に続き、今回の暴力事件は逮捕までされましたから、もう歌舞伎役者として復帰の芽はない。廃業でしょうね。児太郎は御曹司なのをいいことに、ほかの家のお弟子さんにまで難癖をつけることで有名でした。 じつは、梨園でも児太郎の結婚を知らなかった人も多かったんです。普通、梨園の跡継ぎとなる坊ちゃんが結婚するとなれば、数百人の招待客を呼んで歌舞伎興行がない月末に都内の一流ホテルで披露宴と、相場が決まっています。それをしないで籍だけ入れていたというのは、事情があるに決まっています。DV報道後は大騒ぎとなり、児太郎は歌舞伎公演から姿を消したわけです」 もともと、父である九代目福助が七代目歌右衛門を襲名し、児太郎は十代目福助を襲名する予定だったが、2013年に福助が脳内出血に倒れたため、取りやめとなった。その後、大名跡の歌右衛門が宙に浮いている状態となっている。「中村歌右衛門という名前は、明治に五代目が女形を代表する名前にまで育て上げ、それを六代目がより大きく開花させました。六代目は他の追随を許さない“大成駒”と呼ばれるまで名を馳せ、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場で『娘道成寺』を披露。歌舞伎を世界に喧伝する先駆的役割をはたしました。 六代目は、独身で子供がいなかったため、2人の芸養子を迎えました。それが現在、高砂屋の中村梅玉と、加賀屋の中村魁春兄弟です。そのため、歌右衛門の大名跡は、一代ごとに高砂屋と成駒屋を行ったり来たりするのが取り決めとなっています」(同前) 七代目歌右衛門は成駒屋の番となっていたわけだが、児太郎の不祥事によって、その継承に影響が出ているという。「成駒屋としては、七代目歌右衛門を高砂屋に譲るのはもったいないわけです。高砂屋には梅玉の芸養子で、2027年1月は『鷺娘』、3月にはニューヨークで『藤娘』を踊る中村莟玉がいますから、『継ぎなさい』と言われれば明日にでも喜んでそうするでしょう。 では、成駒屋で歌右衛門を襲名できる人がいないのかと見渡したところで、九代目福助の弟の八代目芝翫の息子である橋之助、福之助、歌之助の3兄弟は、全員歌舞伎役者になっているものの、女方には1人もなっていない。女方の代名詞たる歌右衛門を継ぐニンに合った役者は成駒屋にはもはや誰もいないわけです。じゃあもう少し視野を広げてみたら、中村屋の中村七之助がいたわけです。過去には血筋にこだわらず大名跡が継承された例もありますから」(同前) 七之助は、母親が八代目芝翫の姉であり、児太郎のいとこに当たる。そして、祖父は成駒屋の七代目芝翫であるため、成駒屋の家系であるだけでなく、中村屋の家系でもある“サラブレッド”だという。「あとは本人を納得させることだけでしょうね。七之助は、まったく欲のない方。中村屋のことだって少し前までは『中村屋には勘太郎、長三郎という跡継ぎがいるから僕は一生結婚しなくてもいい』と言っていたほど。それが急転直下、2025年に京都の芸者と結婚。2026年8月には娘さんに恵まれました。 それからというもの、七之助は良い意味で本当に変わりました。芸を見ても、人の親になって演技に深みと説得力が出た。8月に歌舞伎座でかかった『鬼神のお松』が良い例です。自分の子を他人に預け、お縄になる幕切れの花道の上で、決め台詞の後に毎日大粒の涙を流すんです。毎日ですよ。あんなの見せられたら、観客も度肝を抜かれます。歌舞伎座にふさわしい大きな役者になった。今月の平成中村座の『助六』の揚巻なんて、場を鎮まらせる美しさ。酔いっぷりが妖しくて、客席を呑み込んでいました。女方の最高峰の役がこの揚巻です。奥さんが背中を押せば、歌右衛門を引き受けるかもしれません」(同前) 現在、300人あまりしかいない歌舞伎役者。そのなかで、女方はたったの25人。その技芸を途絶えさせてはならないだろう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加