日本では何でもない行動が、海外で思わぬ危険を招くことがある。元警視庁公安部外事課の勝丸円覚さんは「日本と同じ感覚が一番危ない。国によってはスマートフォンでうっかり撮影しただけで、スパイ容疑で拘束される場所がある」という――。(第3回) ※本稿は、勝丸円覚『産業スパイ対策の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。■海外滞在はリスクだらけ———-Q 海外滞在中、日本人が見落としがちなリスクとは?A 盗難・盗聴から不用意な撮影まで、リスクは日常のあちこちに潜む!———- 本稿では、情報漏洩やスパイリスクを中心に、海外駐在や海外出張の際に気をつけていただきたいことを紹介していこう。日本のビジネスパーソンが、情報漏洩やスパイなどに関連して直面しうる主なリスクは、次のようなものだ。———-・窃盗・スリ・置き引き・強盗・殺人・盗撮・盗聴・誘拐・逮捕・拘束・憎悪犯罪(ヘイトクライム)・ハラスメント———- 大事な情報の入ったPCが置き引き被害にあったり、最悪の場合、誘拐や強盗などのターゲットにされたり、といった可能性は考えておいたほうがいい。途上国だと、物理的なPCの盗難やバッグごとの盗み出しなど、「泥臭い」手段がまだまだ横行しているから、日本と同じ気分で機密情報を管理していてはいけない。 憎悪犯罪やハラスメントとして、企業情報を他社にばらまかれたり、個人情報が売られたりということもある。また、国家レベルで情報を抜き出すために拘束を受ける可能性も十分にある。 海外の場合、スパイの「容疑者」にされることにも注意したい。中国の反スパイ法(反間諜法)は日本でもしばしば話題になり、企業でも対策に取り組んでいるところが少なくない。■高架橋を撮影して拘束された日本人 意外なところが規制対象になっていて拘束されることもしばしばだ。 ベラルーシで、2024年に高架橋を撮影していた日本人が、スパイ行為として拘束された。スパイ容疑とまでは言わないが、ドバイなどで多いのは、空港の保安検査場などを撮影していて拘束されることだ。 空港、政府施設、軍や警察の施設などは、撮影禁止であることが非常に多い。特に、現地言語が読めない場合には、「なんかすごい建物だなあ」などとパシャっと撮影したら機密性の高い建物だった、などということが起きかねない。 ちなみに、大使館などの在外公館は、「外交関係に関するウィーン条約」によって、施設の不可侵(警察等は原則的に捜査できない)、外交官の不逮捕・免責特権が定められている。この特権を利用するため、スパイ機関の人員が外交官の地位を得て、活動することがよくある。———-<「日本と同じ感覚」が一番危ない。現地のリスクを事前に調べ、意識を切り替えた行動を。>———-