■刑務所、拘置所、少年院…全ての「塀の中」でコンサート537回 「塀の中」が大きく変わろうとしている。2025年6月、「懲役」の廃止などを盛り込んだ刑法改正が施行される。さらに受刑者を「さん」付けにし、刑務官を「先生」との敬称で呼ばせない管理法の導入が進むなど、犯罪矯正のあり方が過渡期に立っている。 そうした動きの中で長年、受刑者の「立ち直り」に寄与してきた歌手がいる。全国の刑務所での慰問コンサートを長年続け、保護司としても活動する井勝めぐみさんと北尾真奈美さんによる異色の女性歌手デュオ「Paix2 (ペペ)」だ。今年、活動25周年の節目の年にあたる。コンサートの回数は500回を超えた。Paix2 のふたりが、刑務所の現状と犯罪矯正のあり方について語った。 「苦しかったのはコロナ禍の3年間ちょっとですね。刑務所で、生のコンサートがほとんどできませんでしたから。仕方がないのでDVDで無観客のライブ映像を収録して、それを全ての施設に配って、見てもらっていました。それが、ようやくコロナ前のペースに戻ってきたという感じです」(北尾さん) フランス語で「平和」を意味する女性デュオ「Paix2 」。看護師だった井勝さんと、岡山大学固体地球研究センター(現岡山大学地球物質科学研究センター)で技術補佐員をしていた北尾さんが、2000年に結成した。 2002年より刑務所や少年院といった矯正施設での「Prison(プリズン)コンサート」を開始。着実に実績を重ね、2024年末までには537回に上った。なんと、全国にある矯正施設(刑務所、拘置所などの成人矯正施設84カ所、少年院43カ所、閉庁した施設53カ所)すべてを訪問しているという。なかには15回以上ライブを重ねた刑務所もある。その活動は高く評価され、法務大臣表彰など数多くの賞を受賞している。 彼女らはただ現地に行って、歌って帰るだけではない。コンサート前日までにトヨタのハイエースに音楽機材を積み込んで出発。マネージャーと交代で運転して、長距離を移動する。刑務所に到着すれば、体育館などに重い機材を運び、音響のセッティングとテストを重ね、その上で本番のステージに立つ。 10数曲を歌いながら、受刑者に向けて自覚を促したり、励ましたりする。そして撤収して、次なる刑務所へと移動……。ヘトヘトになりながら車で帰路につくこともしばしばだ。この慰問コンサートは、薄謝か無報酬という。 「10年ほど前から法務省矯正支援官を任されるようになりました。その肩書が付いてから、刑務官や職員の方が荷物運びなどを手伝ってくれるようになりました。これも、長年続けてきた成果かも(笑)。刑務所によっては長期の受刑者もいて、私たちのライブを何度も聞いてくれるケースもあります。なので、毎回飽きさせないように、前回のライブと内容を変えるように工夫したりしています」(井勝さん)