誰が、父を殺したのか? なぜ、父は殺されたのか? 今期最も熱いサスペンスドラマであり、考察ドラマが幕を開けた。広瀬すずが主演を務める連続ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)である。 原作は浅見理都による同名マンガで第6巻まで刊行、『Kiss』(講談社)にて連載中。原作でもいまだ犯人は明らかになっていない。第1話では原作の第1巻がちょうど丸々描かれており、後半にかけてドラマオリジナルの物語が展開されていくことが予想される。キャスト陣にも犯人が誰か知らされておらず、1月18日に開かれた制作発表会見では、一足先に第1話を鑑賞した観客を対象にしたアンケートが取られていた。 物語はクリスマスイブの夜に山下心麦(広瀬すず)の父・春生(リリー・フランキー)が殺害されるところから始まる。逮捕されたのは、遠藤友哉(成田凌)。春生が刑事時代に捜査していた22年前の「東賀山事件」の死刑囚として服役中の遠藤力郎の一人息子だ。しかし、春生が心麦に遺した手紙には、友哉は冤罪であるという衝撃の記述があった。封筒に入っていた300万円を頼りに、心麦は弁護士・松風義輝(松山ケンイチ)とバディを組み、事件の真相を追うことになる。 第1話のラストにて、心麦が雑誌『週刊ジダイ』の記者・神井孝(磯村勇斗)から告げられる、「あなた、山下さんの本当の娘じゃないですよね?」の真意も気になるところだが、第1話時点でも考察ポイントと言えるシーンが点在している。ここでは先述した会見でのアンケート結果を参考に、第1話の怪しい人物を紐解いていきたい。 まず、アンケートでぶっちぎりの票を獲得し、犯人候補に挙がっていたのは春生の捜査一課時代の部下・赤沢正(藤本隆宏)。認知が歪んでいる友哉による春生への逆恨みとされているが、赤沢自身も認めているように、憶測も入り混じっている。神井に敵意を向けるシーンや「警察も嘘をつきますよ」という松風のアドバイスもヒントになっている、かもしれない。「東賀山事件」のことを聞き、帰路につく心麦を見下す赤沢の部下・秋貞隆雄(絃瀬聡一)の視線も怪しく思えてくる。 アンケートにて、次点で票を集めていたのは、屋台ラーメン店の店主で春生から心麦宛の手紙を預かっていた染田進(酒井敏也)、赤沢の妻・京子(西田尚美)、春生の姉で心麦の伯母にあたる木村夏美(原日出子)の3人。染田と木村はエンディングにてインサートで妖しく登場しており、特に染田は、殺される直前の春生に会っており、手紙が入った封筒と手紙を偽装できる唯一の人物でもある。 タイトルになっている『クジャクのダンス、誰が見た?』の由来はインド哲学の一節で、本作においては「たとえ誰も見ていなかったとしても、犯した罪から逃げることはできない」という意味を持つ。春生がまだ幼い心麦に教えてくれた「クジャクのダンス、誰が見た?」の言葉と、面会室で沈黙を貫く友哉が松風に話した「理由を知っているのは、クジャクだけです」という言葉がリンクする。なお、友哉のセリフは原作にないドラマオリジナル。このクジャクを指すのは、何かを隠したまま亡くなっていった春生なのだろうか。 もう一つ、ドラマオリジナルとしてシーンの追加がされているのが、小麦が松風と波佐見幸信(森崎ウィン)の法律事務所で、コーヒーのかけられたプリンを口に入れる場面。小麦はこれから知りたくなかった真実、父の裏の顔を知ることになるかもしれない。それはドス黒く、苦い真実を飲み込む覚悟。松風とともに、深い森へとクジャクがダンスを踊っていたかを確かめに行こうとする心麦の決心が、広瀬すずの真っ直ぐな眼差しによって表現されている。 「信じ抜く。それだけが、私の希望。」――これは本作につけられたドラマのキャッチコピーだが、冤罪に立ち向かう小麦がこれから目にする真実とは。