政治家志望のち敵視 前首相襲撃の木村被告が逮捕後に宣言した〝公約〟

和歌山市で令和5年4月、岸田文雄前首相の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件で、殺人未遂などの罪に問われた無職、木村隆二被告(25)の裁判員裁判が4日、和歌山地裁で始まった。政治家志望だった被告は現行の選挙制度に不満を募らせ、現職代議士らを「既得権者」とみなして敵視するように。事件当日、現場から連行される際も「制限選挙を終わらせる」と言い放ったという。 ■弁護側「凶悪なテロリスト、そうなのか?」 冷え込みが強まったこの日、黒のコートを羽織り、眼鏡をかけて出廷した被告。弁護人と言葉をかわしながら、落ち着いた様子で裁判の開始を待った。 罪状認否ではときおり沈黙しながら、起訴された5つの罪名それぞれについて「火薬を製造したことは認めます」「人を害する目的はないです」などと、淡々と自身の認識を述べていった。 事件について「現職総理を狙ったテロ」と位置付けた検察に対し、弁護側は「目の前にいる若者は大量殺人をもくろんだ凶悪なテロリスト、果たしてそうなのか?」と疑問を投げかけた。そして、爆発物を投げ込んだのは選挙制度に関する自身の考えに関心を集めたかったからに過ぎないと主張、要人を狙ったテロとの見方を否定した。 《食べた人が秘密にしておきたくなるお菓子をいっぱい作りたい》 《お年寄りや1人暮らしの手伝いをするロボットなど役に立つ機械を作りたい》 小学校の卒業文集にこんな夢をつづっていた被告。友人ともよく遊ぶ活発な少年だったが、中学生になると「あまり学校に行ってくれない」と、親族が周囲に悩みを吐露するようになった。 ■選挙制度に不満募らせ 双方の冒頭陳述によると、大学の通信課程を中退後、地元の郵便局で短期のアルバイトをしながら政治や選挙制度について検索するようになった。「世の中をよくするため」(弁護側の冒頭陳述)に政治家を目指したが、供託金制度などに阻まれ、「日本の選挙は制限選挙だ」と現行制度に不満を持った。 4年6月には被選挙権の年齢規定や供託金制度は違憲だとして、弁護士をつけない「本人訴訟」で、国家賠償請求訴訟を起こした。

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