パワハラなどの疑惑が追及されてきた斎藤元彦兵庫県知事。百条委員会の報告書は、2月定例議会に提出される見通しだが、事態はまだ沈静化していない。1月18日には元兵庫県議会議員で百条委の委員を務めていた竹内英明氏が亡くなった。自死の背景にはSNS上に拡散された竹内氏への誹謗中傷が指摘され、県内の市長からも実態調査を求める声が出ている。だが、斎藤知事は消極姿勢に終始したまま。なぜそこまで他人事のように振る舞うのだろうか。(文中敬称略) (松本 創:ノンフィクションライター) ■ 型通りの追悼コメント、凡庸な一般論 2024年11月の兵庫県知事選から始まったデマ拡散と誹謗中傷に追い詰められ、元兵庫県議の竹内英明が自死して2週間あまり。その選挙で再選を果たした斎藤元彦は、県政トップとして何を語ってきただろうか。 まず報道の翌日、1月20日の囲み取材だ。 「大変ショックを受けております。心からお悔やみを申し上げます」「率直で、時に厳しいご質問をいただいたが、兵庫をよくしたいという強い思いの表れだった」と、用意したコメントを読み上げた。 SNSの中傷に悩んでいたことを問われると、「人の心や気持ちを傷つけることはしてはならない。SNSは冷静な使い方が大事。県としても、条例制定に向けて誹謗中傷のない社会を目指したい」と述べた。 型通りで素っ気ない追悼コメント。SNS被害についても凡庸な標語のように一般論に終始している。 だが斎藤は、デマと誹謗中傷で竹内を攻撃した立花孝志(「NHKから国民を守る党」党首)との“二馬力選挙”で当選した、ある意味で問題の当事者である。知事の姿勢が問われている、もっと具体的に語ってほしいと記者たちは質問を重ねた。 竹内を誹謗中傷するアカウントの削除を要請するべきでは 「竹内が逮捕目前だった」という無根拠な情報が広がっているが、やめるように呼びかけないのか 立花のSNSの言動をどう見ているのか 選挙で立花の応援を受けながら、その言動を他人事のように放置してきた帰結ではないか それでも斎藤の答えは変わらない。「どのアカウントのことかわからない」「立花さんのSNSは拝見していない」と問題の本質から目を逸らし、頑なに一般論を繰り返すのみだった。