軍によるクーデターから4年を迎えたミャンマーで、混乱に乗じて中国系犯罪組織が勢力を拡大しています。 ターゲットには日本人も…その実態の新証言です。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: 私たちの値段は540万円（25万元）だと言われました。 男性が語ったのは自身が経験した犯罪組織による監禁の実態です。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: お尻から下ばかりを殴られ、腰は殴られませんでした。腰（腎臓）は“売れる部分”で、口は電話をかけるため、手は文字を打つために必要だからです。 今も外国人など数千人を監禁しているとみられるミャンマーの中国系犯罪組織。 新たな証言からその姿が見えてきました。 1月に大きな注目を浴びた事件。 訪問先のタイで中国人俳優の男性が行方不明となり、その後隣国ミャンマーで丸刈りの姿で保護されました。 男性はSNSで映画の仕事があるとだまされてタイを訪問。 そこで犯罪組織に拉致され、特殊詐欺に加担するよう強要されていたといいます。 アメリカの調査機関によると中国系犯罪組織による特殊詐欺の被害は年間10兆円近くに上り、その拠点は東南アジアで急拡大しています。 内戦で混乱が続くミャンマーでは特に活動が活発で、タイの市民団体によると男性の拉致に関わった組織では日本人26人を含む23カ国の約6500人がかけ子などの詐欺の実行役をさせられている可能性があるといいます。 知られざる組織の実態を語ってくれたのは、中国・上海に住む許博淳さん。 許博淳さんは2023年に3カ月間にわたってミャンマーに監禁されていました。 そのきっかけは偽の求人広告でした。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: その頃（2023年）私は失業中でSNSのグループで日払いのアルバイトを探していました。「月給21万5000円（1万元）のエキストラ俳優」という募集を見つけました。いま思い出してみても特に違和感はありませんでした。 許博淳さんが誘い出されたのは中国・雲南省にあるミャンマーとの国境の街。 指定されたマンションを訪れると3人の若い男が待っていたといいます。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: 携帯電話と身分証を（男たちに）預けるように言われました。脅す様子はなく「後でホテルに送る際に返す」と。（出演するのは）超大作の映画なので機密を守る必要があるとのことでした。 しかし案内されて向かった山の中で、許博淳さんは初めて自分がだまされていたことに気づきました。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: 木々の間から10人以上の迷彩服を着た男たちが現れたんです。山を下りたところで振り返ると、他の山々からも同じように迷彩服の人たちがだまされた人たちを連れてくるのが見えました。私たち以外に何十人も…。 脅されながら許博淳さんが連れていかれたのは、ミャンマー北部に位置するラウカイ県。 この地域は中国系犯罪組織がいくつも拠点を構える特殊詐欺の中心地として知られ、中国の国営メディアによると2024年だけで5万3000人以上の中国人が逮捕されています。 ここで許博淳さんは人身売買の商品として特殊詐欺を扱うグループに買い取られたといいます。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: 私たちの値段は540万円（25万元）だと言われました「紅蓮ホテル」の看板が見え…「紅」と「蓮」の字が書かれていました。ここが（詐欺グループの）拠点でした。この一つの建物に約1400人が住んでいます。建物全体がひとつの詐欺グループです。私たちのチームは主に東南アジアの中国人をターゲットにしていて、それぞれ机にはパソコンと4台のiPhoneがありました。 監禁され、特殊詐欺のかけ子をさせられる毎日。 成績が悪いと恐ろしい罰が待っていました。 その実態を捉えた映像は、中国系の詐欺グループで撮影されたもので、何人もの被害者が激しい暴行を受けています。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: こんなふうに殴られるのは全く珍しくありません。いつものことです。お尻から下ばかりを殴られ、腰は殴られませんでした。腰（腎臓）は“売れる部分”、口は電話をかけるため、手は文字を打つために必要だからです。 24時間銃を持った組織のメンバーに監視され脱出が不可能な監禁生活。 死と隣り合わせの許博淳さんを救い出したのは、家族が支払った多額の身代金でした。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: ある民間団体が詐欺グループとの交渉に成功し、まず1330万円（62万元）の現金を支払いました。母親とビデオ通話がつながった瞬間、自然と涙がこぼれ落ちました。それまでは泣くこともできなくて…。 最終的に支払った金額は日本円で2150万円（100万元）。 家族がマンションを手放し、さらに借金をして工面しました。 許博淳さんは日本人もすでに被害に遭っていると警鐘を鳴らします。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: たくさんの日本人や韓国人がだまされて送られたと聞きました。日本人が入っている部屋には数十人が閉じ込められていたそうです。 さらにタイの市民団体によると、犯罪組織では日本人を拉致すると5000ドルの報酬が支払われるという話が新たに出ているといいます。 特殊詐欺グループに拉致された許博淳さん: 詐欺グループは支配する全ての人の携帯電話をコントロールしていて、SNSのグループやチャットにまで深く入り込んでいます。自分の街に来て直接会うことができない人は絶対に信用してはいけません。 現地の日本大使館では、犯罪に巻き込まれないよう注意喚起しています。