ハラスメントがはびこる芸能界は外圧でしか変わらないのか…改革を訴えてきた俳優が「黒船襲来」に流した涙

2023年のジャニーズ事務所、2025年のフジテレビと、芸能界はハラスメントの問題で大きく揺れている。2019年から芸能人の労働環境改善を進めてきた森崎めぐみさんは「2023年に国連人権理事会が来日し、私もヒアリングを受けた。そして芸能界に『心の痛む問題がある』という声明が発表された」という――。 ※本稿は森崎めぐみ『芸能界を変える たった一人から始まった働き方改革』(岩波新書)の一部を再編集したものです。 ■安全対策からメンタルケア、最低報酬の設定まで、芸能界の課題 海外の芸能界では、アメリカでインティマシー・コーディネート制度が始まって演技をする上で必要な安全衛生対策を講じ、密着リスクを回避して感染やハラスメントを防止する対策が広くヨーロッパに浸透しています。イギリスでは舞台芸術で働く人のうつ病の発症率が一般の人の約2倍で、不安定労働によりワークライフバランスを崩していることがわかり、俳優の組合がメンタル憲章を掲げました。 私たち日本芸能従事者協会は、産業医と臨床心理士に加えて、保健師や専門健康心理士などと連携しながら、芸能生活のサポート体制を充実させつつ、現場視察をしながら安全衛生研修を実施しています。 2024年には映画監督が準強姦の疑いで逮捕されたことで、ハラスメント対策をないがしろにしていた人たちが、いよいよこのままではいけないと危機感を抱き始めたようです。そうした動きの中で、俳優や劇団員向けのハラスメント研修はもちろんのこと、仕事を委託するプロデューサーや監督に向けたハラスメント研修も需要が高まってきました。 今後は、建設業に浸透している安全確保のための取り組みを参考に、最低賃金にならぬ最低報酬を設定できるようにして、なおかつ安全のための経費を誰もが使える仕組み作りが必要だと考えています。 ■安全祈願などこれまでの慣習を活かしつつ、改善できるのでは 日本の芸能業界には、古くから映画や演劇公演での習わしとして、安全祈願がありました。仕事の期間に三つの節目があり、「初日(しょにち)」「中日(なかび)」「千秋楽(せんしゅうらく)」と呼ばれています。 クランクインや公演初日には撮影所や劇場のどこかしこにある小さな稲荷神社に神主を呼び、お祓(はら)いやお清めをして安全祈願をする慣習があります。 実際は「中日」には中打ち上げをすることで、ストレスを解消し、結束を強めていました。 このような慣習は、残念ながら制作費や安全経費の削減により次第に少なくなっていますが、安全意識を高める上でも重要な習わしだと思います。 これを応用すれば、初日の顔合わせでハラスメントや安全衛生対策の研修を実施し、健康診断を受け、中日にストレスチェックと疲労蓄積度セルフチェックをして、必要に応じて産業医の指導を受け、千秋楽には臨床心理士によるカウンセリングを受けて、心身をリセットして次の仕事に向けたセットアップとしてのケアをしたら完璧でしょう。

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