みずほ銀行の元行員が2019年、支店の貸金庫から顧客2人の現金計数千万円を盗んだ事件について、加藤勝彦頭取は27日、東京都内で報道陣の取材に応じ「お客さまに不安を与えてしまい大変申し訳ない」と謝罪した。加藤氏は、事件の発生当時に詳細を公表しなかった理由について「公表を望まない顧客がいたため」などと釈明。「安心してご利用いただけるように努めていく」と述べた。 みずほ銀は2019年に事案を把握していたが、約5年が経過した今月18日になって初めて事案を公表した。加藤氏は当時公表していなかった理由について、被害者が特定できていたことや、類似の事案がなかったこと、公表を望まない顧客がいたことなどを挙げ「(当時は)適切なプロセスで対応していたと思う」と述べた。 ただ昨年、三菱UFJ銀行で同様の事案が発覚したことも踏まえ、顧客からの不安の声が高まったことなどからこの日の説明に踏み切ったとした。加藤氏は「対外公表姿勢についてご指摘があることは承知している。真摯(しんし)に受け止め、今後の経営に生かす」と語った。 みずほ銀はこの日、事案の詳細についても公表した。貸金庫から現金を盗んでいたのは、広尾支店に勤務していた当時30代の元行員の女性。16年から19年にかけ、顧客から貸金庫の開錠依頼があったように偽り、支店に保管されていた予備の鍵を用いて2人の顧客の貸金庫から計6600万円を盗んでいた。 元行員は19年、貸金庫からの窃盗とは別に、顧客への融資と偽ってみずほ銀から約5200万円をだまし取ったことが発覚。21年に警視庁に逮捕されており、その調査の過程で貸金庫からの窃盗が発覚したという。みずほ銀は行員を懲戒解雇し、予備の鍵の管理体制を強化。定期的に調査を行い、現在までに同様の事案は発生していないとしている。