尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾裁判が2カ月間にわたる11回目の弁論で終結し、今や判決を残すのみとなっている。尹大統領は最後まで「非常戒厳は国の危機を克服するための大統領の合法的な権限行使」だと主張したが、法曹界からは「全員一致での弾劾認容」決定が下されるだろうとの観測が慎重にではあるが示されている。 罷免は高位の公職者が憲法や法律に違反した際になされるが、多くの憲法の専門家が、2カ月あまりの弾劾裁判で大統領の罷免事由は十分に立証されたと口をそろえる。延世大学法学専門大学院のイ・ジョンス教授は、「すでに全国民が非常戒厳を見守っており、国務会議の手続きの違法性や政治家逮捕指示など、弾劾訴追事由が様々なルートから十分に立証されている」として、「朴槿恵(パク・クネ)元大統領も全員一致で認容決定が下されたが、それと比較しても事案の重大さや法律違反の余地が大きい事案であるため、8対0を予想する」と述べた。元高位裁判官も「核心争点である戒厳宣布要件そのものがそろっていないので憲法違反は明らかであり、その他の諸争点も立証された」として、「朴槿恵元大統領の際も全員一致だったが、今回の場合は事案がより明白で重大だ」と指摘した。かつて憲法裁判所で憲法研究部長を務めたキム・スンデ弁護士は、「法的に考えただけでも事実関係、証拠調査も必要ないほど違法性が立証されている。大統領職をもはや遂行できないほどであることは確か。棄却は出にくい」と述べた。 尹大統領側の主張してきた「警告のための非常戒厳の正当性」も十分に立証されていない、とも指摘されている。建国大学法学専門大学院のハン・サンヒ名誉教授は、「違憲で違法な戒厳を宣布しなければならない特段の事情があるのか、違法性は阻却できるのかについて、大統領側は主張さえまともにできず、これらは論証されなかったと考える」と評した。イ教授は「警告のための戒厳というのは法的な用語でもない。事後的な弁明などは内心の意思に過ぎず、客観的な行為をもって判断しなければならない」と述べた。キム弁護士は「違憲性そのものは否定できないが、尹大統領側の代理人団は戒厳の正当性を争うとともに、違憲性を否定することに力を注いだようだ」とし、「むしろ大統領職の遂行ができないほどの重大事ではないという部分で裁判官を説得しなければならないが、できていないと考える」と語った。 尹大統領の弾劾裁判の判決日程の残された変数は、マ・ウンヒョク裁判官候補の任命だ。27日の権限争議審判でマ候補の不任命は国会の裁判官選出権を侵害したと判断され、チェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官がマ候補を裁判官に任命すれば、マ候補の弾劾裁判への合流問題が発生する。マ候補が尹大統領の弾劾裁判に合流するためには、弁論期日を追加指定して更新手続きを経なければならない。キム弁護士は「弁論が終結した事案については終結時の法廷が判断すればよいので、マ裁判官の任命が弾劾の判決に及ぼす影響はないだろう」と述べた。憲法裁での勤務経験を持つ判事も「マ候補が任命されるとしても、8人で判決を下すのではないかと考える」として、「弾劾宣告の日程に影響を及ぼすことはないと思う」と述べた。尹大統領を弾劾するかどうかの判断は8人からなる法廷が下すだろう、との観測だ。憲法裁判研究院長を務めた経験を持つ亜洲大学法学専門大学院のイ・ホンファン教授は、「争点も多くなく、評議に多くの時間は要さないだろう」とし、「各事由について理由を書く時間などを考慮すれば、3月7日か遅くとも11日までには判決が下されるのではないかと思う。迅速に国家の混乱状況を解決することも憲法裁の義務」だと述べた。 チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ [email protected] )