【カイロ=佐藤貴生】トランプ米政権は発足後、中東に関連する政策も多数発表した。イスラエルを擁護する政策が目立ち、ネタニヤフ首相らの逮捕状を出したオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)には制裁も発動して、支援姿勢を鮮明にした。対照的に、パレスチナやイランには厳しい態度で臨む方針が浮き彫りになった。 イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスが戦火を交えたパレスチナ自治区ガザに関し、トランプ大統領は2月上旬、住民のパレスチナ人全員を域外に移住させて米国がガザを「所有」する構想を発表した。 親米アラブ諸国が一斉に強く反発し、2月下旬には「(構想は)強制していない」と発言をトーンダウンさせたが、自らの交流サイト(SNS)アカウントに、ガザが豪華なリゾートに一変した様子を描いたイメージ動画を投稿。こだわりは捨てていないようだ。 バイデン前米政権はイスラエルの自衛権に基づくガザの攻撃を支持したが、民間人の犠牲を抑えるため戦闘方法を変えるよう求め、攻撃に歯止めもかけようとした。トランプ政権の政策は、そうした前政権の方針を覆すものも少なくない。 パレスチナ人が多数派のヨルダン川西岸に移住して住民を襲撃する「ユダヤ人入植者」に関しては、前政権が科した制裁を解除した。前政権が凍結したイスラエルへの大型爆弾などの兵器供与も再開した。 ルビオ米国務長官は1日、トランプ政権は成立以降に総計120億ドル(約1兆8千億円)相当のイスラエルへの兵器供与を承認したとし、今後も「可能な全ての手段」を動員して支援を続けると強調した。 一方、トランプ政権は「反ユダヤ主義を普及させている」との理由で、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出の停止を表明した。ルビオ氏は2月中旬のイスラエル訪問の際、バイデン前政権が戦後ガザの統治の担い手に挙げたパレスチナ自治政府の当局者とは対面しなかったもようだ。 前政権が意欲を示したパレスチナ国家建設によるイスラエルとの「2国家共存」は、いまや風前の灯といっても過言ではない。