2022年10月1日、79歳で亡くなったアントニオ猪木。今なお熱烈なファンを擁する猪木だが、世に喧伝されるそのイメージは二重三重の皮膜に包まれてきた。 話題の新刊『兄 私だけが知るアントニオ猪木』(講談社刊)は、猪木家の末弟である啓介氏から見た、5歳年上の兄・猪木寛至の「人間の記録」だ。ブラジルへの移民、力道山との出会い、新日本プロレス、政治と事業、4度にわたる結婚、そして晩年の兄弟断絶と闘病。70年余に及んだ兄弟の歴史がすべて記されている。 新日本プロレスが好調だった80年代、猪木は新たに実業家としての顔も見せ始め、世界の食糧問題を解決する「夢の計画」アントン・ハイセル事業にのめり込むようになる。だが、専門家不在のプロジェクトは失敗に次ぐ失敗で、莫大な負債を抱えることになるのだった。 『兄 私だけが知るアントニオ猪木』(第14回)