高知県立美術館が所蔵するドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンクの油彩画「少女と白鳥」に贋作(がんさく)の疑いが浮上している問題で、県は14日、専門家による調査を踏まえて「贋作と判断する」と発表した。今後、購入先の画廊に返金を求める。 「少女と白鳥」はドイツ表現主義を代表するカンペンドンクの1919年の作とされ、同館が96年に1800万円で名古屋市の画廊から購入した。昨年6月に贋作の疑いを外部から指摘され、専門家に依頼して調査していた。 県文化国際課の発表によると、絵画の作者はカンペンドンクではなく、画家ヴォルフガング・ベルトラッキ氏の「可能性が高い」とした。同氏は「伝説の贋作師」と呼ばれ、ドイツ警察による逮捕歴があり、朝日新聞の取材に対して「私が描いた」と明かしていた。 判断の理由として(1)絵画が制作された年代には画家の描画用絵の具として一般的でなかった「チタニウムホワイト」などが使われている可能性が高い(2)作品の裏側に、ベルトラッキ氏の自作と思われる偽造ラベルが貼られている(3)ドイツ警察が作成したベルトラッキ氏の贋作リストに「少女と白鳥」が画像とともに掲載されている、ことを挙げた。 県は今後、作品を購入する際、来歴や関連情報について念入りに検証するなどの再発防止策をとる。「少女と白鳥」については、経緯を明示したうえで一般公開することも検討するという。(羽賀和紀)