1985年に起きた冤罪事件、いわゆる「松橋事件」を巡り、再審で無罪になった男性の遺族が国と熊本県に約8500万円の損害賠償を求めた裁判で、熊本地方裁判所は遺族側の請求を一部認め、国に約2380万円の支払いをを命じました。 一方で県への請求は棄却しました。 ■熊本地裁 検察を“厳しく非難” 記者「判決を終えて弁護団が出てきました。一部勝訴の紙が掲げられました、一部勝訴です」 殺人罪が確定して服役した後に、再審(=裁判のやり直し)を経て無罪が確定した宮田浩喜(みやた こうき)さんが、国と県に損害賠償を求めた裁判。 裁判所は、無罪につながる証拠の存在を裁判で明らかにしなかった熊本地検について「証拠の存在は自白の信用性に重大な疑念を生じさせたのに、その注意義務に反した」と厳しく非難しました。 ■「松橋事件」とは?時系列で詳しく解説 そもそも「松橋事件」とは、どのような事件なのでしょうか。 1985年に発生したこの事件は、当時の熊本県松橋町(まつばせまち)、現在の宇城市で男性が何者かに殺され、男性の知人で当時51歳だった宮田浩喜さんが逮捕されました。 警察や検察は「宮田さんから自白を得た」として逮捕・起訴しましたが、宮田さんは「取り調べでうその自白をさせられた」と無実を主張。 最高裁まで争いましたが、裁判所は宮田さんの自白だけで懲役13年の判決を確定させ、1999年まで服役しました。 ■事件から34年…言い渡された「無罪」 しかし宮田さんの自白と異なる物証が熊本地検に残っていたことなどが弁護団の調査で判明し、2012年に弁護団が再審を請求。そして2019年。 記者(2019年3月28日)「無罪です。34年前の松橋事件で無罪判決です。弁護団の粘り強い活動が実を結びました」 熊本地裁は宮田さんの自白の信用性を否定したうえで、「宮田さんが犯人であることを示す証拠はない」として無罪を言い渡しました。 ただ、この判決では冤罪(えんざい)につながった原因について言及はありませんでした。