〈以前にお宅を工事した者ですが、時間があいたので無料点検しますよ〉 男たちは、こんな電話をかけ高齢男性を勧誘。男性の自宅を訪れ、工事代金をだまし取ろうとしたという――。 警視庁暴力団対策課は3月12日、詐欺未遂の疑いで東京都中央区に住む無職・斎藤竜実容疑者(35)を逮捕した。仲間と共謀し、床下工事の代金を不正に得ようとしたとされる。 「事件は約3年半前の’21年11月に起きました。斎藤容疑者らは無料点検をうたい、神奈川県秦野市に住む80代の男性Aさん宅を訪問。〈基礎部分にヒビがある。今すぐ工事しないと大ごとになります。家が傾くことになる〉と、Aさんの不安を煽り契約を結び、リフォーム詐欺で43万円をだまし取ろうとしたとされます。 斎藤容疑者は暴走族OBらによる匿名・流動的犯罪(トクリュウ)グループ『打越スペクター』の実質のトップです。メンバー十数人がリフォーム業者『三洋』や『三農』を名乗り、不安を煽って工事契約をする『点検商法』を繰り返していたとされます。警察によると、昨年3月までの約2年半で被害にあった人は1都3県で100人ほどになり、被害総額は5700万円にのぼるとされるんです」(全国紙社会部記者) ◆〈屋根が壊れているのが見えた〉 本誌カメラマンは、3月14日に行われた斎藤容疑者の送検を撮影。護送車の後部座席でうずくまり、顔をあげることはなかった。近年、点検商法によるトラブルが増えている。 「警視庁暴力団対策課は3月11日にも、SNS上で『スーパーサラリーマン』を名乗る40代の男ら男性4人を逮捕しています。彼らの犯行内容は悪質です。〈近所で工事をしていてお宅の屋根が壊れているのが見えた〉などと相手を不安にさせ、不必要な工事契約を結んでいたとされるんです。’19年2月からの約5年間で約800件の工事契約をし、100億円以上を売り上げていたといわれます」(同前) 点検商法が増加する背景を、元神奈川県警の刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。 「コロナ禍が明け訪問販売の規制が解除されると、一気に点検商法による事件が増えました。被害者の多くが高齢者の一人暮らしです。高齢者は屋根などに上れないので、家屋の損壊などはわかりません。悪質なリフォーム業者の言い分を信じてしまうケースが多いんです。 また1人暮らしの高齢者にとって、息子や孫のような年齢の若者が来てくれるのは嬉しいもの。『お母さん』『お父さん』などと声をかけられれば、つい話を聞いてしまうでしょう。加害者たちは、そうした高齢者の心理につけ込んでいるんです。悪質な犯罪といえます」 警察は、点検商法犯罪を繰り返すトクリュウの全貌解明に向け捜査を進めている。