男性2人をそそのかし入水自殺させたとして自殺教唆容疑で逮捕された自称占い師、浜田淑恵容疑者(62)は男性らを自身の信奉者にして金品などを差し出させ、果ては命まで投げ出す決意をさせた。その入り口は、霊的な存在などを通じて問題を解決するというスピリチュアルカウンセリング。容疑者は悩みを抱える人を狙い、周囲から孤立させていた疑いがあり、専門家は「マインドコントロールの典型的な例だ」と指摘する。 「『創造主』で神が降臨している」。浜田容疑者は自身をこう表現し、男性らに信じ込ませていたという。大阪府警によると、自殺した男性らは自身の給与だけでなく、知人から借りた金まで献上。浜田容疑者の指示にはすべて従う「忠実な信者」だったという。霊感商法などに詳しい加納雄二弁護士(大阪弁護士会)は容疑者について「悩みを聞き、次第に相手の心をつかみ、精神的に支配するマインドコントロールの手法で相手を服従させていたのでは」とみる。 男性2人の死亡後、別の信奉者の50代男性からも総額8千万円を脅し取ったとされる浜田容疑者。自殺教唆事件などで共謀したとされる女も熱心な信奉者で、被害者だけでなく共犯者も支配下に置かれていた構図が浮かび上がる。 日本脱カルト協会代表理事で立正大学心理学部の西田公昭教授(社会心理学)によると、マインドコントロールの取っかかりは、悩みや弱みを抱える人に「私はあなたの唯一の味方だ」と近づいて人間関係を築くこと。続いて、家族や友人らとの交流を断たせて社会的に孤立させ、周囲に支配する側の人間しかいない状況に置いていく。 ターゲットになった人は、真偽を確かめることができない環境下で不安や恐怖を与えられ、「言われたとおりにしなければ破滅する」と妄信。考えることを放棄し、ただ従うだけになるという。 府警によると、浜田容疑者は男性2人に入水自殺を決意させる際、目的を「命を捨てて(浜田容疑者の交際相手から)悪いものを取り除く」と伝えていたという。この点、西田氏は「『創造主』の浜田容疑者の交際相手なら神の上の存在の人だと思わせ、『交際相手を救うために身を犠牲にすることは素晴らしいことで世界が救われるなら』という考えに至ったのかもしれない」と推察する。 また西田氏によると、支配者の指示を受けた側近が下位の信奉者をターゲットとする構造は、マインドコントロールに関する事件ではよくあるケースだという。