フランスと旧植民地アルジェリアが移民問題で対立を深めている。仏側がアルジェリアに強制送還の受け入れを求めるのに対し、アルジェリアは「押し付けるな」と反発し、批判の応酬が続く。マクロン仏大統領は旧植民地との関係改善を目指してきたが、歴史に根ざす確執克服の難しさが浮き彫りになった。 ■国外退去、実現1割以下 「移民対立」が火ぶたを切ったのは今年1月。仏当局が南仏在住のアルジェリア人を「交流サイト(SNS)で暴力を扇動した」として逮捕し、強制送還しようとしたことだった。アルジェリア政府は受け入れず、身柄は飛行機でフランスに戻された。 2月にはイスラム過激派とみられるアルジェリア人の男が仏東部でテロ事件を起こし、1人を刺殺した。テロ礼賛の言動で有罪判決を受け、強制送還の対象となった人物だと発覚。バイル仏首相は「アルジェリアに10回受け入れを拒否された」となじり、圧力をかけるため、強制送還の対象者約60人の名簿を突き付けた。アルジェリアは取り合わず、仏閣僚や与党重鎮から「わが国への侮辱」「対抗措置を」など怒りの声が出た。仏統計によると昨年、アルジェリア人不法滞在者は国別最多の約3万4千人で、国外退去に至ったのは約3千人にとどまる。仏側にくすぶっていた不満が噴出した形だ。 ■国境紛争で態度硬化 今回の移民対立には伏線がある。昨年夏、アルジェリアとモロッコの国境紛争で、フランスがモロッコ寄りの姿勢を表明したことだ。米国やスペインと歩調を合わせたものだったが、アルジェリアのテブン大統領は激怒し、駐仏大使を召還した。テブン氏は移民問題ではかねて強硬派で、仏紙との会見で「アルジェリア人は(フランスが植民地支配を続けた)132年分のビザ(査証)をもらってもよいではないか」と歴史に重ねて皮肉を言ったこともある。 仏在住のアルジェリア人は約87万人で、2世を加えると約200万人とされる。モロッコなどほかの旧植民地と異なり、フランスが2国間協定により家族呼び寄せで優遇措置を認めたことが背景にある。アルジェリア移民の多くは両国に親族を持ち、経済交流の担い手となっていることから、故国での影響力は強い。ビザ削減や協定見直しをほのめかす仏側に、アルジェリア政府は対抗姿勢を示さざるを得ない。 ■「未来志向の関係」難航